バイオ研究とは?応用分野や期待されること、現状の課題を解説!

バイオ研究は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術の発展、デジタル技術との相互作用により、近年目覚ましい成長を遂げている分野です。化石燃料に代わるものづくりとして、地球環境の社会問題への対策でも注目されています。

本記事では、バイオ研究の概要や応用分野、期待される点を解説します。記事の後半では、バイオ研究が抱える課題も紹介しているので、ぜひ最後までご一読ください。



バイオ研究とは?

バイオ研究とは、生物が持つ能力や性質を解明し、人々の生活で利用できる製品やサービスを研究することです。

バイオ(bio)は英語で「生命」や「生物」を示す接頭語で、バイオロジーは「生物学」を意味します。

「バイオロジー」と「研究」を組み合わせた「バイオ研究」、「バイオロジー」と「テクノロジー(技術)」を組み合わせた「バイオテクノロジー」、「バイオロジー」と「ものづくり」を組み合わせた「バイオものづくり」など、分野により様々な呼ばれ方をしています。

生物の能力や性質を生活に活かすバイオ研究の技術は、実は古くから活用されています。酒や味噌、納豆や漬物などの「発酵」の技術、野菜や果樹を交配させる「品種改良」の技術はその一例です。

近年では、細胞融合や遺伝子組み換え技術、バイオ医薬品や再生医療、バイオ燃料や生物農薬をはじめ、動物やヒト、ウイルスなどの多彩な生物の能力や性質が多くの分野で研究されています。



バイオテクノロジーの応用分野

バイオ研究やバイオテクノロジーは幅広く応用されています。以下では、5つの分野に分けて研究・開発の内容を紹介します。

  • ホワイトバイオ
  • グリーンバイオ
  • レッドバイオ
  • ブルーバイオ
  • グレーバイオ

ホワイトバイオ

ホワイトバイオは、化学分野のバイオテクノロジーです。具体的には、遺伝子組み換え微生物を活用したアルコールの生成、多糖類の性質を利用したバイオプラスチックの創製、微生物に強度の高いクモの糸と同様のタンパク質を生み出させる技術などが例に挙げられます。

バイオテクノロジーは生物の性質を活かすことから、石油を原料としたプラスチックなどと比較するとCO2(二酸化炭素)の排出量が少ない技術です。そのため、カーボンニュートラルの実現に寄与する技術として注目されています。


グリーンバイオ

グリーンバイオは、農業分野のバイオテクノロジーです。グリーンバイオ分野では、近年、高生産・環境適応植物の設計、植物や微生物の相互作用を活用した低肥料・低農薬技術、バイオマス生産植物などの研究が進められています。

また、環境保全やバイオエネルギー、グリーンインフラなどのバイオテクノロジーも、グリーンバイオに含まれる場合があります。


レッドバイオ

レッドバイオは、製薬、医療、健康分野のバイオテクノロジーです。生命に深く関わる血液の赤のイメージから、「レッドバイオ」と呼ばれています。

レッドバイオでは、バイオ医薬品や遺伝子治療、再生医療や遺伝子組み換えによる抗体医薬の生産、薬理ゲノミクスや遺伝子検査などが取り扱われています。発展途上国を含む各国の政府投資や患者数の増加により、世界的に需要が増加している分野です。


ブルーバイオ

ブルーバイオは、海洋、水産物分野のバイオテクノロジーです。例えば、CO2をより固定化できる藻類の開発、微細藻類や光合成細菌に着目した研究などが挙げられます。

海洋は、地球の表面積の約7割を占めるエリアです。陸上にはない特殊な環境も多く、多様な環境に適応する生物が持つ能力や性質を活かす研究が進められています。


グレーバイオ

グレーバイオは、環境分野のバイオテクノロジーです。微生物を活用した排水処理、組換えDNA技術を活用した環境浄化微生物の作成などが、グレーバイオの例に挙げられます。

特に、微生物を活用して排水中の有機化合物を分解する技術は、排水処理にかかるコストとCO2排出量の両方を削減できる技術として注目されています。



バイオものづくりのニーズ

バイオものづくりとは、遺伝子技術をもとに生成した微生物や動植物の細胞を活用して、素材や原料、燃料などの物質を生み出すことです。以下で、バイオものづくりが注目される背景や期待されていることを解説します。


バイオものづくりが注目される背景

バイオものづくりが注目される背景には、近年のゲノム技術の急速な発展が挙げられます。

例えば、次世代シークエンサーが開発されたことにより、ゲノム解析にかかるコストと時間は大幅に短縮されています。2000年頃は、一人あたりのヒトゲノム解析に1億ドルのコストと10年の時間がかかっていましたが、2020年には技術革新により一人あたり1,000ドルのコストと1日の時間に短縮されました。

また、ゲノム編集のハードルが低下しており、DNA合成コストも低下している状況です。

ゲノム解析やゲノム編集、AIやIT技術の活用により、有用物質の生産性が高い細胞(スマートセル)が生み出され、スマートセルを利用した機能性ポリマーや高機能材料の生産・商用化が進んでいます。


バイオものづくりに期待されること

バイオものづくりの進展により、次の社会課題の解決が期待されています。

  • 脱炭素への貢献によるカーボンニュートラルの実現
  • 生分解性プラスチックによる資源循環
  • フードテックを活用した食料需要への対応

マッキンゼーの分析によると、バイオ関連の市場は2030年から2040年にかけて、低い予測で約200兆円、高い予測で約400兆円に達すると予想されています(※)。

バイオものづくりにはアメリカや欧州連合(EU)、中国、日本をはじめとする多くの国で集中した投資が行われる方針で、今後高い需要が見込まれる分野です。



バイオ研究を取り巻く課題

バイオ研究を含む分野は高い成長性が期待される一方、いくつかの課題が存在します。以下では、「技術力」「市場性」「消費者の受容性」の3つの観点からバイオ研究を取り巻く課題を解説します。


技術力の課題

バイオ研究の成果を商品化・実用化する場合、技術力が課題のひとつです。原料の前処理、微生物の改変、細胞の培養・精製・加工など、様々な面で技術力の向上が求められます。その他、技術開発を支える人材の確保や研究に必要な資金の調達にも対応が必要です。


市場性の課題

現段階では、バイオプロセスで製造された商品は単価が高い傾向にあります。燃料や基幹化学品は大量生産が求められるため、単価の低い既存の化学製品と比較して優位性を保てない点が課題です。まずは高付加価値領域で成果を上げ優位性を確立し、順次、低コスト化や量産化を検討していくプロセスの開発が求められます。


消費者の受容性の課題

バイオ研究で製造された製品は、遺伝子組み換えやDNA編集などの新たな技術が活用されます。これまでとは異なる技術で生み出された製品に対する消費者の受容性も課題です。

不安や疑問を解消するため、事業者と消費者、行政担当者などの関係者間で丁寧なリスクコミュニケーションをとる必要があります。他にも、消費者に安全性や有効性をアピールするためには、バイオ製品の表示ルールの策定や魅力を際立たせるブランディング、廃棄物回収の徹底など、事業者と行政の緊密な連携が必須です。

相互の協力で効果的な市場作りをする体制が求められています。



バイオ研究に関する情報収集に「ファーマラボ EXPO」の活用を!

バイオ研究の情報収集をしたい方、関連する製品・サービスの知見を広めたい方は、「ファーマラボ EXPO」にぜひご来場ください。

ファーマラボ EXPOはインターフェックスWeekの構成展のひとつで、医薬品の研究開発やバイオ研究に関する技術も多数出展しています。バイオ研究の専門ゾーンも特設されており、試薬や消耗品、顕微鏡やゲノミクス関連機器など実物を見ながら情報収集が可能です。

ファーマラボ EXPOには、バイオ研究に関わる医薬品メーカーや診断薬メーカーの研究者、大学や国公立研究所でバイオ関連の研究に携わる方などが来場され、各種製品やサービスを出展する方と来場する方とで導入相談などの商談も行われます。

ファーマラボ EXPOは、バイオ関連ビジネスのプラットフォームにもなる場です。関連技術をお持ちの方や自社技術を広めたいと考えている方は、ブースを出展することをお勧めします。

なお、入場には来場登録が必要です。登録方法については、以下のページをご確認ください。

■ファーマラボEXPO東京

■ファーマラボEXPO大阪



バイオ研究は今後のビジネス機会獲得に大きく関連する分野

バイオ研究の応用分野は、化学や農業、製薬や環境など多岐にわたります。社会問題の解決と経済の成長を両立する分野として様々な国や地域で官民投資が検討されており、ビジネスの機会が見込める分野です。

ファーマラボ EXPOにはバイオ研究の専門ゾーンが特設されていて、最新の技術トレンドを把握できます。バイオ研究の情報収集に、ぜひファーマラボ EXPOをご活用ください。

■ファーマラボEXPO東京
 詳細はこちら

■ファーマラボEXPO大阪
 詳細はこちら



▶監修:橋本 光紀

医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役。
九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研に海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。


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