バイオ医薬品とは?種類・製法や期待されることを詳しく解説!

近年、低分子医薬品では治療できない疾患にも効果があるバイオ医薬品が注目されています。従来の低分子医薬品だけではなく、バイオ医薬品の研究・開発にも取り組むことで、社会貢献だけでなく製薬業界の成長にも繋がります。

本記事では、主に製薬企業で医薬品の研究・開発・製造に携わる方に向けて、バイオ医薬品がどのようなものなのかを解説した後に、バイオ医薬品の種類や期待されること、製法、利用する際の注意点をご紹介します。



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バイオ医薬品とは

バイオ医薬品とは、哺乳類細胞やウイルス、バクテリアなどの生物によって生産される物質(タンパク質など)を用いた医薬品です。「生物学的製剤」と呼称される場合もあります。バイオ医薬品は、遺伝子組換え技術や細胞培養技術などを駆使して製造され、化学合成で生産される低分子医薬品に比べて分子が大きく、構造が複雑です。

以下で、バイオ医薬品の働きや低分子医薬品との違い、バイオシミラーとの違いをご紹介します。


バイオ医薬品の働き

従来の低分子医薬品では治療できなかった病気や、充分な効果が得られなかった病気に対しても、バイオ医薬品であれば治療できる場合があります。なお、バイオ医薬品の働きは、以下の2種類に分類可能です。

  • 不足するタンパク質を補う働き
  • 病気を引き起こす分子の機能を抑制する働き

それぞれに対応したバイオ医薬品による治療例は後述します。


低分子医薬品との違い

低分子医薬品は主に化学合成によって製造され、分子量は500以下が多く、多様な剤型(錠剤・粉末・液状など)に加工されます。

一方、バイオ医薬品は、細胞を用いて製造され、分子量は数千~15万程度です。なお、バイオ医薬品の場合、主に静脈内や皮下などに注射して投与されます。口から服用すると消化酵素の作用を受けてタンパク質分子が分解されるため、経口薬には加工されません。


バイオシミラーとの違い

バイオシミラー(バイオ後続品)とは、先行バイオ医薬品と同等の品質・安全性・有効性がある医薬品として、異なる企業によって開発された製品です。先行バイオ医薬品の特許期間が終了し、再審査期間が満了してから市販されます。

バイオ医薬品は成分が複雑であり、先行バイオ医薬品と完全に同じ製品を作ることは難しいため、製造工程で厳格な品質管理を実施しなければなりません。そのため、低分子医薬品の後続品を意味する「ジェネリック医薬品」と区別する目的で、異なる呼称が使用されています。

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バイオ医薬品の種類

バイオ医薬品は、働き・作用によって、以下に示す2つの種類に分類可能です。

  • 不足するタンパク質を補う製品
  • 病気を引き起こす分子の機能を抑制する製品(抗体医薬品など)

それぞれ詳しく説明します。


不足するタンパク質を補う製品

ヒトの体内では多種多様な生理活性タンパク質が機能していますが、病気に罹患すると特定のタンパク質が不足する場合があります。近年、生理活性タンパク質が不足する患者に対して、遺伝子組換え技術などを用いてタンパク質を人工的に生産し、バイオ医薬品として投与する治療法が普及しています。

以下は、不足するタンパク質を補うバイオ医薬品を用いた治療例です。

  1. インスリン不足を補う製剤を投与し、血糖値を調節する
  2. エリスロポエチン不足を補う製剤を投与し、赤血球を増やす

1は糖尿病の治療で、2は貧血の治療で実施されます。


病気を引き起こす分子の機能を抑制する製品(抗体医薬品など)

病気を引き起こす分子の機能を抑制するために、抗体を人工的に産生し、抗体医薬品として使用される場合があります。

抗体医薬品による治療が実施される病気の代表例は、がんです。がん治療では、がん細胞の増殖や免疫反応に関係する分子(がん細胞表面に存在)に対して特異的に結合する抗体が用いられます。また、関節リウマチの治療では、病気の発症に関係する分子(TNFαやIL-6)の働きを抑える抗体が使用されます。



バイオ医薬品に期待されること

バイオ医薬品は、治療法が存在しなかった病気や、従来の低分子医薬品では高い効果を得られなかった病気の治療に役立ちます。また、製薬業界の国際的競争力の強化にもつながります。

以下は、現在市場に出ているバイオ医薬品の一例です。

近年、日本だけではなく、米国・欧州・中国・韓国・台湾・中東・東南アジアなど、世界中でバイオ医薬品の研究・開発が進められています。将来的に、がん・免疫疾患・アレルギー・中枢神経系疾患・腎臓疾患など、多種多様な領域の疾患でバイオ医薬品が使用されることが期待されています。

日本の製薬業界が国際競争力を強化するためには、国内のバイオ生産技術およびデジタル技術を結集した上で、製造技術プラットフォームの構築が求められます。加えて、世界に先駆けて安定生産可能な製造法の開発が必要となるでしょう。



バイオ医薬品の製法

以下は、バイオ医薬品を製造する大まかな流れです。

  1. 生産したい物質をコードする遺伝子をベクターに組み込む
  2. 遺伝子を宿主(大腸菌・酵母など)に導入し、目的物質を生産する細胞を構築(より多くの目的物質を生産する細胞を選び出す)
  3. 選び出された細胞を増やし、小分けにして容器に入れ、凍結保存して「セルバンク」を構築
  4. セルバンクに保管された細胞を培地に入れ、増殖させる(数百mlから数千リットルのスケールまで段階的に拡大して培養しながら、目的物質を生産)
  5. フィルターなどを用いて細胞・不純物を培養液から除去(「ハーベスト」と呼ばれる)
  6. 培養上清(細胞が除去された液体)から、目的物質を取り出す

上記の6段階のうち、1~3は細胞構築段階に、4~6は原薬(有効成分)製造段階に区分されます。なお、上記内容は大まかな流れです。詳細は製薬会社ごとに異なるので、各社の公式サイトなどでご確認ください。



バイオ医薬品を利用する際の注意点

バイオ医薬品を利用する際には、以下のような注意点もあります。

  • 低分子医薬品よりも高額な傾向がある
  • 副作用が起こる場合がある

それぞれ詳しく説明します。


低分子医薬品よりも高額な傾向がある

バイオ医薬品は、生産する際に数百~1万リットル規模の大型培養タンクを用いて、安全性と有効性を担保した条件で細胞を扱うため、低分子医薬品に比べると高度な技術と品質管理が必要です。加えて、原材料なども高価であるため、製造原価が増大する結果、低分子医薬品よりも薬価が高い傾向が見受けられます。

ただし、高額療養費制度を活用すれば負担軽減が可能なので、経済的に余裕がある患者しかバイオ医薬品を利用できないというわけではありません。高額療養費制度とは、医療機関・薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月間の上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、後日、超えた金額が払い戻される仕組みです。

なお、医療費が高額になると事前に予想される場合は、「マイナ保険証」や「限度額適用認定証」を提示する方法を選択する方法もあります。マイナ保険証や限度額適用認定証を窓口で提示すれば、1ヶ月の支払金額の上限が自己負担限度額までとされ、一時的に自己資金で立て替える必要がありません。

マイナンバーカードを持っておらず「限度額適用認定証」を発行したい時は、加入中の健康保険組合に問合せましょう。


副作用が起こる場合がある

低分子医薬品と同様に、バイオ医薬品でも副作用が起こる場合があります。以下は、副作用が起こる原因の一例です。

  • 有効成分が効き過ぎているため(例:インスリン製剤による低血糖)
  • 有効成分が複数の作用を持つため(例:インターフェロン製剤による発熱)
  • 薬剤が作用する分子が複数の機能を持つため(例:抗EGFR抗体製剤による皮膚障害)
  • 不純物によるアレルギー反応のため

また、上記以外に、免疫原性による有害反応のリスクやインフュージョンリアクション(注射・点滴で薬剤を投与してから24時間以内に生じる急性の過敏性反応)が起こるケースもあります。

低分子医薬品の場合と同様に、患者はバイオ医薬品の副作用を事前に医師に確認し、気になる点があった場合は、医師に相談しましょう。医療従事者は、投与中および投与後しばらくは、患者の状態を慎重に観察する必要があります。副作用の情報は、医療機関から厚生労働省や製薬企業に報告され、今後の安全対策に活かされます。



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▶監修:宮岡 佑一郎

公益財団法人東京都医学総合研究所再生医療プロジェクト プロジェクトリーダー

埼玉県出身。2004年、東京大学理学部生物化学科卒業。2006年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。2009年同大学院博士課程修了。博士(理学)。2009年4月、東京大学分子細胞生物学研究所助教。2011年7月、米国Gladstone研究所、UCSFポスドク。2016年1月より、公益財団法人東京都医学総合研究所、再生医療プロジェクト、プロジェクトリーダー(現職)。2019年、科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞。


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