医薬品添加物とは?種類や使用条件、安全性に関して詳しく解説

医薬品を製造する際には、有効成分の他に医薬品添加物も使用されることが一般的です。医薬品添加物を使用する場合は、「日本薬局方」や「医薬品添加物規格」で定められている規格や、厚生労働省の事務連絡をチェックした上で製造しなければいけません。

本記事では、医薬品添加物の役割や種類、使用条件、安全性、表示ルールに関して詳しく解説します。




医薬品添加物とは

医薬品添加物(医薬品添加剤)とは、製剤の有用性を高めるために医薬品に添加される物質の総称です。有効成分の特性・投与経路・剤形を踏まえて、溶解補助・pH調節・等張化・吸収促進・安定化・成形などを目的として添加されます。

有効成分だけでは苦かったり、臭かったりする場合がありますが、医薬品添加物を加えて苦味・臭気をマスキングすることで、服用しやすい医薬品を提供することも可能になります。

医薬品添加物に関する規格(物質名・性状)は、「日本薬局方」や「医薬品添加物規格」などで示されています。加えて、厚生労働省の事務連絡に詳細(Q&Aなど)が記載されているケースもあるため、医薬品添加物を含む医薬品を製造するのであれば、ひととおりチェックしておかなければなりません。


医薬品添加物と食品添加物の違い

食品添加物とは、保存料・甘味料・着色料・香料など、食品の製造過程で(または加工・保存の目的で)使用される物質の総称です。医薬品ではなく食品に添加される物質であることが、医薬品添加物との違いです。

厚生労働省は、食品安全委員会による食品添加物の安全性に関する評価を踏まえて、健康を損なうおそれがない場合に限って、成分の規格や使用基準を定めた上で使用を認めています。使用が容認されている食品添加物のリストは、厚生労働省公式サイトでご確認ください。



医薬品添加物の種類

以下は、医薬品添加物の主な種類です。

  • 賦形剤:錠剤・散剤(粉薬)・顆粒剤などの固形製剤に、成型・増量・希釈を目的として加えられる
  • 安定剤:分解を抑制したり、容器などへの吸着による含量低下を防止したりする目的で加えられる
  • 保存剤:微生物の繁殖防止(殺菌)や変質防止を目的として加えられる
  • 緩衝剤:経時的なpH変動を防止する目的で加えられる
  • 粘稠剤:滞留性・持続性を向上させる目的で加えられる
  • 懸濁化剤:サスペンション(液体中に固体粒子が分散した状態)を安定させるために加えられる
  • 乳化剤:エマルション(ある液体に、別の混じりあわない液体が微粒子状に分散した状態)を安定させるために加えられる
  • 溶解補助剤(崩壊剤):消化管内の水分を吸って膨張することで錠剤や顆粒を溶解・崩壊させ、有効成分を溶出しやすくする目的で加えられる
  • 矯味剤:苦味をマスキング・軽減し、服用しやすくするために加えられる
  • 着香剤:飲み薬や皮膚に使用する外用薬などに香りを付与する目的で加えられる
  • 着色剤:外観を美化して商品価値を高めたり、製造工程および出荷後における識別を容易にしたりすることを目的として加えられる

これらの医薬品添加物はいずれも、製剤の投与量で薬理作用を示さず無害であることが求められます。まれに、医薬品添加物によってアレルギーなどの有害反応が引き起こされる場合があるため、注意しなければなりません。



医薬品添加物の使用条件

使用された前例がある物質だけではなく、新規に開発した物質に関してもルールに基づいて適切に手続きを実施すれば、医薬品添加物として医薬品に加えることが可能です。

以下、使用された前例がある医薬品添加物と、これまでに使用されたことがない医薬品添加物に関して、医薬品に添加するための条件を詳しく説明します。


前例があるケース

「日本薬局方」や「医薬品添加物規格」に収載された物質、およびそれら以外で厚生労働省に認可された医薬品添加物は、投与経路・最大使用量の範囲内であれば、試験データなどを提出せずに使用することが認められています。

「日本薬局方」とは、医薬品の性状および品質の適正を図るために厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて定める公定文書です。また、「医薬品添加物規格」とは、日本薬局方に収載されていない医薬品添加物の規格を収録した文書です。

医薬品添加物として使用された前例がある物質に関しては、『医薬品添加物事典2021』(日本医薬品添加剤協会が編集した医薬品添加物に関する事典)に規格(最大使用量など)が掲載されています。規格を踏まえて、医薬品添加物を適切な使用が求められます。


前例がないケース

医薬品添加物として使用された前例がない物質に関しては、安定性や安全性に関する試験データなどを厚生労働省(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に提出し、審査を受けなければいけません。以下は、審査の際に提出する資料の例です。

  • 起源または発見の経緯および外国の使用状況に関する資料
  • 製造方法・規格・試験方法に関する資料
  • 安定性に関する資料
  • 毒性(単回投与毒性・反復投与毒性・生殖発生毒性・遺伝毒性)に関する資料
  • 局所刺激(皮膚一次・累積刺激・眼粘膜刺激・ヒトパッチテスト)に関する資料

審査の結果、承認が得られれば、医薬品添加物として使用できます。



医薬品添加物の安全性

先発医薬品とジェネリック医薬品では、有効成分は同じであっても医薬品添加物が異なるため、不安を感じる方もいるかもしれません。

「日本薬局方」「医薬品添加物規格」『医薬品添加物事典2021』に収載された物質であれば、厳格な審査を経た上で承認されているため、先発医薬品同様、ジェネリック医薬品も安全性が担保されています。

ただし、先発医薬品・ジェネリック医薬品の別に関わらず、患者の体質や医薬品の飲み合わせなどによっては、医薬品添加物が原因でアレルギー反応などの副作用が生じる場合がまれにあります。製薬会社は、かかりつけ医に相談しながら医薬品を選ぶように、患者に対して周知する必要があります。



医薬品添加物の表示ルール

医薬品に添付する文書の「組成」欄には、有効成分と医薬品添加物を明確に区別して記載しなければいけません。なお、添付文書に記載する内容(記載項目、文字の大きさ、字体、単位、略称使用の可否など)に関しては、細かいルールが定められています。

日本製薬団体連合会が日本医薬品添加剤協会と協力して作成した「医薬品添加物記載名称の指針」などを参照しながら、適切に対応しましょう。また、厚生労働省公式サイトに掲載されている各種通知(「医療用医薬品添加物の記載について」など)もご確認ください。不明な点がある場合は、独自に解釈するのではなく、厚生労働省に問合せましょう。



「インファーマ ジャパン」で医薬品添加物の情報を収集しよう

RX Japanが主催する展示会「インファーマ ジャパン」では、医薬品添加物など、数多くの医薬品原料が展示されます。

製薬会社で医薬品添加物を取り扱っている方や、これから取り扱う予定の方は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。また、医薬品添加物を開発・製造・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。

なお、インファーマ ジャパンはインターフェックスWeekの構成展のひとつです。詳細は、以下のリンクでご確認ください。

■第20回 インファーマ ジャパン
2026年5月20日(水)~22日(金) 幕張メッセ 開催



医薬品を開発する際にはルールを守って医薬品添加物を使用しよう

医薬品添加物とは、製剤の適用性を高めるために医薬品に添加される物質の総称です。賦形剤・安定剤・保存剤・緩衝剤・粘稠剤・懸濁化剤・乳化剤・溶解補助剤(崩壊剤)・矯味剤・着香剤・着色剤など、多種多様な種類があります。

医薬品を製造する際には、最大使用量などのルールを守って医薬品添加物を加えましょう。また、添付文書の「組成」欄には、有効成分と医薬品添加物を明確に区別して記載しなければいけません。

RX Japanが主催する展示会「インファーマ ジャパン」では、様々な医薬品添加物が展示されます。製薬会社で医薬品添加物を取り扱っている方や、これから取り扱う予定の方は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。医薬品添加物を開発・製造・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。

■第20回 インファーマ ジャパン
2026年5月20日(水)~22日(金) 幕張メッセ 開催
詳細はこちら



▶監修:山本 佳奈

ナビタスクリニック内科医、医学博士

1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)での勤務を経て、現在、ナビタスクリニック(立川)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。


▼この記事をSNSでシェアする


■関連する記事