中分子とは?創薬におけるメリットや今後の展望、低分子・高分子との違いを解説
医薬品の世界では、低分子医薬品と高分子医薬品が長らく主役を担ってきました。しかし、最近注目を集めているのが、その両者の中間に位置する中分子医薬品です。従来の治療法では難しかった疾患へのアプローチを可能にし、新たな治療法の可能性を秘めています。
そこで本記事では、中分子の定義や特徴について解説します。低分子・高分子との違いや創薬における中分子のメリット、中分子創薬の今後の展望についてもあわせてご紹介します。
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中分子とは?
一般的に中分子とは分子量500〜2000程度で、分子量500未満の低分子と分子量15万程度の高分子の中間に位置する化合物をさします※。従来は分子量が小さくシンプルな構造の低分子医薬品が開発の中心でしたが、近年は抗体医薬品をはじめとする高分子医薬品や、核酸医薬品やペプチド医薬品などの中分子医薬品が世界的なトレンドとなっています。
低分子医薬品や高分子医薬品との違い
低分子医薬品の特徴は主に以下の5つです。
- サイズが小さく細胞膜透過性に優れる
- 標的分子に対する特異性が低い
- 経口投与が可能
- 化学合成が可能
- 製造コストが低い
高分子医薬品は基本的に低分子医薬品と反対の特徴を有しており、主に以下の5つです。
- サイズが大きく細胞膜透過性が低い
- 標的分子に対する特異性が高い
- 経口投与ができない
- 化学合成ができない
- 製造コストが高い
低分子医薬品と高分子医薬品の中間サイズにあたる中分子医薬品は、両者の長所をあわせ持ちます。細胞膜を通過できるだけでなく、標的分子への特異性が高い点が特徴です。化学合成も可能なため、高分子医薬品と比べて製造コストを抑えることができます。また、経口投与が可能なのも臨床応用する上での利点です。
中分子創薬とは
中分子創薬とは、中分子を中心とした新しい創薬モダリティであり、具体的には環状ペプチドや核酸をベースとした創薬のことです。低分子医薬品と高分子医薬品の長所をあわせ持ち、治療の幅を広げる新たな領域の医薬品として注目を集めています。免疫抑制薬のシクロスポリンや抗菌薬のダプトマイシンなど、既に臨床応用されている中分子医薬品もあります。
最近では、塩野義製薬や中外製薬などの製薬会社も中分子創薬に注力しており、臨床試験に進んだ候補化合物もあります。日本国内でも中分子化合物ライブラリーの整備が進められており、アカデミアなどの公的機関での利用が促進されています。
創薬における中分子のメリット
創薬における中分子医薬品のメリットは主に4つです。
- 標的特異性が高い
- 経口投与が可能
- 化学合成で製造可能
- PPIを標的にすることが可能
この4つのメリットについて、以下で詳しく解説します。
標的特異性が高い
ある程度の分子量を有する中分子は、高分子同様に面積の大きい生体分子に対しても特異的に捉えられます。これにより、低分子や高分子では難しかった高い特異性が必要な細胞内分子を標的にすることが可能です。
標的特異性が高いと、ターゲット以外の分子や細胞への作用を抑えることができ、低分子医薬品と比べて副作用が少ない点も特徴です。また、高分子医薬品と比べて半減期が短く体外排泄が速やかな点も副作用の少なさにも寄与しています。
経口投与が可能
中分子は構造によりますが、そのサイズから細胞膜透過性を有していることが多いです。そのため、低分子同様に消化管から吸収されるため、経口投与が可能となります。
経口投与は安全で費用もかからないため、大きなメリットと言えます。
化学合成で製造が可能
中分子は低分子同様に化学合成による製造が可能であり、抗体医薬品をはじめとする高分子医薬品と比べて製造コストを抑えることができます。また、中分子医薬品のなかでもペプチドについては化合物ライブラリーの構築が容易であり、今後さらなる中分子創薬の発展が期待できるでしょう。
PPIを標的にすることが可能
PPI(タンパク質間相互作用)とは、生体内のタンパク質分子間に発生する相互作用の総称であり、様々な生理機能の発現の重要な役割を担っています。タンパク質の表面を認識するにはある程度の大きさが必要であり、従来の低分子では困難だったPPIの標的化が中分子では可能です。
また、特定のPPIを阻害することで、病気の進行を抑制する新しい治療法の開発が進んでいます。特にがんや神経変性疾患などでは、異常なPPIが病態に寄与していることがわかっており、これを標的とした治療法の開発・臨床応用が期待されています。
中分子医薬品に期待されていること
中分子医薬品は、従来の治療法では難しかった疾患へのアプローチを可能にし、難病や希少疾患に対する治療の飛躍的な進歩、新たな治療法の可能性を秘めています。また、既存の治療法と比べて投与経路や副作用、治療費といった患者負担の軽減についても大きな期待が寄せられています。
現在、中分子医薬品市場は小規模ですが、今後急速な成長が見込まれています。ペプチド医薬品市場は年率8%、核酸医薬品市場は年率17%の高い成長率が予測されており、次世代の治療法としての重要性を示しています※。
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中分子創薬は、難病や希少疾患への新たな治療法に繋がる可能性を秘めており、今後のさらなる発展が期待されています。また、個別化医療においても大きな期待が寄せられており、一人ひとりへの最適な治療の提供、患者の治療負担軽減にも大きく影響します。
従来から医薬品の中心であった低分子医薬品や現在創薬の中心である高分子医薬品と比べて、中分子医薬品の市場規模はまだ小さいです。しかし、ペプチド医薬品と核酸医薬品の両方に高い成長率が見込まれており、中分子創薬の重要性を示していることがわかります。
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▶監修:山本 佳奈
内科医、医学博士
1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)、ナビタスクリニック(新宿・立川)内科医での勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
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