服薬アドヒアランスとは?不良に陥る要因や企業の改善事例を解説
アドヒアランスは、従来のコンプライアンスの考え方を発展させ、近年の医療現場で重視されている概念です。コンプライアンスが、医療従事者の指示を患者が受動的に守ることをさすのに対し、アドヒアランスは、患者と医療者が合意した治療方針を、患者自身が主体的に実践することを意味します。
患者中心の医療が進むなかで、治療への理解と納得を前提としたアドヒアランス改善への関心は高まっています。その実現に向けては、医療現場の業務効率化やデジタル技術を活用した支援体制の構築が、重要な検討課題となっています。
本記事では、アドヒアランスの基本から不良の要因、改善に向けた取り組みを整理します。あわせて、最新デジタルツールを比較検討できる展示会情報も紹介します。
服薬アドヒアランスとは?
服薬アドヒアランスとは、患者が治療方針や薬の服用計画を理解し、納得した上で主体的に服薬を継続することです。単に医療者の指示を守るだけの受動的な行動ではなく、患者自身が治療に積極的に関与する点が特徴です。
アドヒアランスが良好な状態では、処方どおりに服薬が行われるため、治療効果を十分に発揮しやすくなります。その結果、疾患管理や健康状態の改善に寄与するとされています。
反対に、アドヒアランスが不良な場合、期待された治療効果が得られにくく、病状の悪化や合併症リスクが高まることがあります。その結果、再受診や入院の増加を通じて、医療費に影響を及ぼす可能性があります。
服薬アドヒアランスは、患者だけでなく、医療者や社会にも影響を与える重要な概念です。
服薬アドヒアランス不良の要因
服薬アドヒアランス不良の要因は、社会経済的背景、疾患や治療の特性、患者本人の理解や生活環境、医療機関・薬局の体制など、多岐にわたります。服薬アドヒアランスの改善策を検討する上で、こうした不良の要因の理解は欠かせません。
以下では、介入しやすさの観点から、アドヒアランス不良につながる具体的な要因を、患者側と医療機関・薬局側に分けて紹介します。
患者側の要因
患者側の要因には、治療や服薬に関する理解の難しさや、日常生活との両立の難しさ、服薬管理に伴う負担などが挙げられます。以下に、代表的な要因を示します。
知識・理解に関する要因:病状や治療の意義、副作用への対応方法についての十分な理解が得られにくい場合、服薬への不安や中断につながることがあります。また、副作用への不安や薬に対する誤解、効果を実感しにくい状況などは、服薬継続の妨げとなることがあります。
生活・行動パターンに関する要因:患者の日常生活や行動パターンが複雑である場合、服薬の継続が困難になりやすいです。多忙な生活や不規則な生活リズムは、服薬を忘れたり中断したりするリスクを高めます。
服薬管理に関する要因(多剤併用):多剤併用は服薬管理を複雑にするため、誤服や服薬忘れを引き起こすことがあります。とくに高齢者では、多剤併用により服薬回数やタイミングが複雑になることで、アドヒアランス低下に関連するとされています。
医療機関や薬局側の要因
医療者と患者の関係性に加え、医療機関や薬局における体制やシステム設計も、服薬アドヒアランスに影響を与えます。
なかでも、診療や調剤における時間的制約や業務負担の影響により、十分な対話や服薬に関する説明の機会を確保しにくい状況は、アドヒアランス不良につながる要因のひとつとされています。患者が服薬や治療に関する疑問を解消できない場合、服薬中断のリスクが高まることがあります。
また、医療機関や異なる診療科、薬局同士の連携が十分でない場合、患者への支援が断片的になり、処方の意図が伝わりにくくなることがあります。その結果、患者が治療内容を十分に理解できず、混乱を招く可能性があります。こうしたシステム上の課題もアドヒアランス不良の一因として指摘されています。
服薬アドヒアランスを改善するには?
服薬アドヒアランスの改善には、単なる服薬の促しだけでなく、患者一人ひとりの背景や生活環境を踏まえた支援が重要です。近年では、薬剤師による専門的なアセスメントと継続的なフォローに加え、デジタルツールを活用した支援の取り組みも広がっています。
以下では、薬剤師による服薬フォローアップの強化と、服薬管理アプリやオンライン服薬指導を用いたアプローチを紹介します。
薬剤師による服薬フォローアップを強化する
薬剤師は調剤業務に加え、患者の服薬状況の把握や、薬学的知見に基づく継続的な指導を担っています。薬剤師による継続的なフォローアップは、患者の不安や服薬中断への早期対応につながり、その結果、患者の治療満足度や服薬アドヒアランスの向上が期待されます。
こうした薬剤師の役割は、2020年に改正された薬機法を背景に、厚生労働省の通知・指針においても業務として明確に位置付けられています※。
服薬管理アプリ・オンライン服薬指導を活用する
近年、スマートフォン向けの服薬管理アプリが注目されています。アプリでは、飲み忘れ防止の通知や薬歴の一元管理が可能です。患者自身が服薬計画を視覚的に把握しやすくなるため、服薬アドヒアランスの向上に寄与するとされています。紙の手帳よりも持ち運びやすい点もメリットです。
さらに、対面指導を補完する手段として、薬剤師が遠隔で患者に説明を行うオンライン服薬指導も活用されています。オンライン服薬指導により、患者は自宅にいながら薬剤師から継続的な支援を受けることが可能です。患者がアプリを通じてオンライン服薬指導を予約できるサービスもあり、相談機会の確保や継続支援に役立っています。
こうしたデジタルツールは、薬剤師のフォローアップと組み合わせることで、服薬アドヒアランスの改善に寄与するとされています。
服薬アドヒアランス改善に向けた事例
近年、一部の製薬企業や薬局は、患者が治療を継続しやすい環境づくりにも積極的に取り組んでおり、服薬アドヒアランス向上を支援する新たなモデルとして注目されています。
以下では、オンライン診療・服薬指導プログラム、デジタルアプリを活用した受診喚起・服薬継続支援という2つの事例を紹介します。
オンライン診療・服薬指導プログラム
アムジェン株式会社と株式会社MICIN(マイシン)は、オンライン診療サービス「curon(クロン)」を活用した共同検証プログラムを実施しています。対象は、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬など、治療・服薬の長期継続が必要な慢性疾患を持つ患者です。
本プログラムでは、スマートフォンアプリの機能を活用し、診察や服薬指導、通院に関する通知などをオンラインで行う仕組みが検証されています。こうした取り組みは、患者の通院負担の軽減や治療継続を支援する手段として、その有用性が検討されています。
デジタルアプリを活用した受診喚起・服薬継続支援
株式会社スギ薬局とアストラゼネカ株式会社は、薬局と製薬企業という異なる立場から協力し、患者中心の支援モデル構築に向けた取り組みを進めています。
具体的には、スギ薬局のアプリで健康や行動に関するデータを取得し、患者の行動やニーズを把握する試みが行われています。これらのデータをもとに、服薬継続や受診行動を支援する方法について検討が進められています。
病院・製薬企業・薬局がデジタル技術を通して連携し、患者支援を行うこうした取り組みは、服薬アドヒアランス向上に向けた新たなアプローチとして注目されています。
服薬アドヒアランス改善に向けたデジタルツールやアプリの情報収集なら「ファーマDX EXPO」へ
服薬アドヒアランスの改善に向けてデジタルツールの活用を検討する方には、医薬品業界で日本最大規模の展示会「インターフェックスWeek」への来場がおすすめです。
「インターフェックスWeek」内で開催される「ファーマDX EXPO」は、医薬品・医療業界向けのDXソリューションやデジタルツールが一堂に出展する展示会です。
幅広い分野のDXソリューションが出展しており、実物を体験しながら比較・検討できます。会場では、無料のセミナーや展示デモを通じて、最新のデジタル活用事例などに関する情報収集が可能です。
交流イベントも開催されるため、製薬企業・医療機関・DX企業関係者にとってはネットワーク作りの場にもなるでしょう。
なお、「インターフェックスWeek」は、出展企業を募集しています。アドヒアランス関連のデジタルツールをお持ちの企業は、自社の取り組みやサービスを発信する機会として、ぜひお役立てください。
服薬アドヒアランスをDXで強化する
服薬アドヒアランスは、患者の健康と医療の質の向上を支える重要な概念です。一方で、医療機関や薬局間の連携不足、患者の知識や理解の差など、様々な要因からアドヒアランス不良が生じているのが現状です。
デジタルツールは、患者データの収集・整理・分析などを支援するとともに、医療機関や薬局間の情報共有を補完する手段として活用が進んでいます。医療者の専門性とデータ活用を組み合わせることで、継続的なフォローアップや個別性のある支援を行いやすくなると考えられています。
また、こうした取り組みは、医療の質向上を目指す施策の一環として、結果的に企業活動の価値向上につながる可能性もあります。
服薬アドヒアランス改善に向けてデジタルツール導入を検討する際は、展示会で実物を確認し、複数の選択肢を比較した上で判断することが重要です。無料セミナーや展示デモを活用すれば、社内での情報共有や理解促進の機会としても活用できます。
自社のアドヒアランス戦略を検討する場のひとつとして、「ファーマDX EXPO」の活用をすることも選択肢のひとつといえるでしょう。
▶監修:山本佳奈
内科医、医学博士
1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)、ナビタスクリニック(立川)での勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
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