CDMO(医薬品開発製造受託機関)とは?CMOとの違いや活用するメリットを解説

製薬業界の関係者であれば、CDMOという用語に一度は接したことがあるでしょう。CDMOは、製薬会社が市場での競争力を保つために不可欠です。

本記事では、主に製薬会社の経営者や社員に向けて、CDMOに関して徹底解説します。近年CDMOが注目される理由や背景、CDMOを活用するメリット、業界の課題もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。




CDMO(医薬品開発製造受託機関)とは?

CDMOとは、医薬品の「開発業務」や「製造業務」を受託する企業を意味しています。英語の「Contract Development and Manufacturing Organization」の略語で、日本語では「医薬品開発製造受託機関」などと訳されます。

まずは、CDMOの事業内容やCDMOとCMOの違いについて説明します。


CDMO(医薬品開発製造受託機関)の事業内容

CDMOは製造施設・設備を保有し、他社(創薬ベンチャー企業など)から、医薬品を製造する業務や高品質かつ安定的に量産する技術を開発する業務を請け負っています。

半導体業界では、以前から「研究」と「製造」が分離されており、製造業務のみを請け負う「ファウンドリー」と呼ばれる事業形態が存在しますが、CDMOは「ファウンドリー」の製薬業界版として位置付けられるでしょう。

創薬の成功確率を向上させるために、社内資源(人員など)を「研究」に集中させたい製薬業界では近年、CDMOの存在感が高まっています。


CDMOとCMOの違い

CDMOと似た言葉に「CMO」があります。CMOとは、英語の「Contract Manufacturing Organization」の略語であり、日本語では「医薬品製造受託機関」などと訳されます。

CDMOは「製造」に加えて「開発」も受託しますが、CMOは「製造」のみを受託し、「開発」は受託しません。

厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021 」によると、バイオ医薬品のCMO/CDMO市場は、今後10年間で年率8%程度の成長が見込まれています。



CDMO(医薬品開発製造受託機関)が注目される理由・背景

CDMOが注目される背景には、医薬品市場の構造変化があります。近年、化学合成による「低分子医薬品」に加えて、バイオテクノロジー(細胞培養や遺伝子組み換え技術など)を駆使して生産される「バイオ医薬品」が治療で用いられる事例が増えました。

バイオ医薬品は、低分子医薬品よりも実用化の難易度が高いため、「研究」により多くの経営資源(人員や予算など)を集中させたいと考える製薬会社も少なくありません。そのため、製造工程をCMOやCDMOに委託する製薬会社が増えています。

なお、CDMOは、「すでに承認された医薬品の製造」だけではなく、「効率的に生産するプロセスの開発」も請け負う場合があり、競争力を強化する上で欠かせません。



製薬会社がCDMO(医薬品開発製造受託機関)を活用するメリット

製造業務をCDMOに委託した場合、製薬会社に次のメリットがあります。

  • 研究開発に集中できる
  • 製造に伴うコストを低減できる
  • グローバルに供給できる
  • 非常時の輸入途絶リスクを低減できる

それぞれの詳細を順番に説明します。


研究開発に集中できる

CDMOに医薬品の製造工程を任せることで、より多くの経営資源(人員など)を「研究」に回せます。

製薬業界をとりまく環境が変化するなかで成長し続けるためには、全業務を自社で抱え込むのではなく、適切に「水平分業」を実施する選択肢も出てくるでしょう。

研究・製造・販売などの全てを自社で遂行せずに分業することで、自社の強みを活かせる領域(研究業務)に特化できます。

例えば、難易度の高いバイオ医薬品を実用化するための研究に経営資源を集中できれば、他社との競争に勝利しやすくなるかもしれません。


製造に伴うコストを低減できる

CDMOを活用すれば、製造に伴うコスト(臨床試験設備など工場を稼働させるための電気料金・水道料金など)を低減できます。工場の運営に関するノウハウを有する人材を社内に配置する必要がないため、人的コスト削減も可能です。

創薬ベンチャー企業の場合、少ない資金と人員で業務を遂行する場合もあるでしょう。そのような場合でも、CDMOに委託することで限られた人員やその他のリソースを新しい医薬品の研究に集中させることができます。


グローバルに供給できる

医薬品の規制は、国・地域ごとに詳細が異なるので注意が必要です。とはいえ、言語や法律の壁があり、世界各国の法令を遵守しながら製造する自信がないとお悩みの方もいるのではないでしょうか。

CDMOのなかには、様々な国・地域に製造拠点を有し、世界各国の規制当局から承認を受けた実績がある企業も存在します。海外展開を目指す場合は、各国の規制を熟知したCDMOに製造を委託して、グローバルに医薬品を供給しましょう。


非常時の輸入途絶リスクを低減できる

海外から輸入された医薬品に頼ると、緊急事態が発生した際に充分な供給量を確保できない可能性があります。例えば、「新型コロナウイルス感染症ワクチン」の場合、「海外で生産された製品」の輸入に依存していたため、国内で接種を開始するまでに一定の期間を要しました。

しかし、医薬品の製造をデュアルユースに対応した日本国内のCDMOに委託していれば、パンデミックなどの非常事態が発生した際にはワクチン生産に切り替えられるので、輸入途絶リスクを低減できます。



CDMO(医薬品開発製造受託機関)業界が抱える課題

以下は、現在のCDMO業界が抱える課題です。

  • 国内の製造拠点が少ない
  • 国内のCDMO(医薬品開発製造受託機関)の実績不足
  • 製薬会社とCDMO(医薬品開発製造受託機関)の双方の人材不足

各課題について順番に説明します。


国内の製造拠点が少ない

日本国内の製造拠点(工場)の数が少ない点が、現在CDMO業界が抱える課題のひとつです。

現在、日本政府が補助金を支給して製造拠点の拡充に努めているため、将来的には日本国内に拠点を有するCDMOが増加すると予想されます。


国内のCDMO(医薬品開発製造受託機関)の実績不足

製薬企業が製造の委託先を検討する際には、「過去の実績」も重要な判断材料です。しかし、現状では日本国内には実績が豊富なCDMOが少ないため、「実績不足」を理由として委託を見送らざるを得ないケースがあるかもしれません。

今後、少しずつ国内業者の実績が積み上げられると予想されますが、時間がかかります。実績が豊富なCDMOに製造を任せたいのであれば、海外CDMOへの委託も検討するとよいでしょう。


製薬会社とCDMO(医薬品開発製造受託機関)の双方の人材不足

現在の日本では、製薬企業とCDMOの双方が、ノウハウを有する人材を充分に確保できていません。

この課題についても、日本政府は「補助金の支給」を実施して事態の打開に向けて動いています。また、一般社団法人バイオロジクス研究・トレーニングセンターでは、ノウハウを学べる「研修プログラム」を提供しているので、近い将来、製薬企業やCDMOで必要な知識を有する人材が増加するでしょう。



CDMO(医薬品開発製造受託機関)を探すなら、「インターフェックスWeek」にご来場を

製薬企業の製造部門に従事する方のなかには、「CDMOの活用事例に関する情報を収集したい」「CDMOに委託したいけれど、どの業者に声をかければ良いのか判断できない」とCDMO導入を検討中の方もいるでしょう。

「インターフェックス Week」は、医薬品・化粧品の研究から製造まであらゆる製品・サービスが一堂に出展する展示会です。国内外のCDMOが出展する「特設展示エリア」もあります。CDMOに関する理解を深めたい場合や委託先をお探しの場合は、ぜひご来場ください。

■インターフェックスWeek東京
2026年5月20日(水)~22日(金) 幕張メッセ 開催

■インターフェックスWeek大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金) インテックス大阪 開催



CDMO(医薬品開発製造受託機関)に製造業務を委託して、優れた医薬品を供給しよう

化学合成による「低分子医薬品」に加えて、バイオテクノロジー(細胞培養や遺伝子組み換え技術など)を駆使して生産される「バイオ医薬品」も治療で用いられる時代が到来しました。

CDMOに外部委託すると製薬会社は研究にリソースを集中できるため、バイオ医薬品のような実用化の難易度が高い製品の創薬にチャレンジできます。製薬会社やCDMOに携わっている方は、ぜひRX Japanが主催する展示会「インターフェックスWeek」へのご来場・ご出展をご検討ください。

■インターフェックスWeek東京
2026年5月20日(水)~22日(金) 幕張メッセ 開催
詳細はこちら 

■インターフェックスWeek大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金) インテックス大阪 開催
詳細はこちら



▶監修:前田修

薬剤師。
大学院修士課程を分子薬理学専攻で修了後、製薬会社の研究所でドラッグデザインを含む新薬探索研究に従事。その後、国立国際医療センター研究所(当時の名称)で外部研究員として、さらに臨床開発業務を経て新規薬剤の創薬に携わる。開発業務受託機関で、他科診療領域の新薬製造販売承認取得を支援。その後、調剤薬局株式会社で代表取締役に就任。現在は、複数の医療関係記事を執筆中。


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