ICHガイドラインとは?4つの分野や合意プロセスを解説!

医薬品分野では、グローバルな視点に立った規制や基準の統一化が進められています。ICHガイドラインは、各国・地域の専門家が協働して作成する指針です。品質と有効性、安全性および各領域にまたがる複合領域の4つの分野で、日々新しいトピックの提案やガイドラインの協議が行われています。

本記事では、ICHやICHガイドラインの概要、合意までのプロセスを解説します。ICHガイドラインとGMPの違いも紹介しているので、ぜひご一読ください。



ICHガイドラインとは?

ICHガイドラインとは、ICHが規定するガイドラインです。以下では、ICHやICHガイドラインの概要、医薬品に関する基準のGMPとの違いを解説します。


ICHとは

ICHとは、「International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)」の略称です。加盟国の医薬品規制当局や製薬業界の代表者が参加する国際会議で、各国で進められた医薬品承認審査の基準を、グローバルなかたちで合理化・標準化するために発足しました。

ICHの主な目的は、限られた資源で安全かつ品質の高い医薬品が世界的に供給されるよう、規制の調和を図ることです。

ICHには現在、日本やアメリカ、EUやカナダ、スイスなどの規制当局・医薬品業界団体、国際的な医薬品関連団体(IGBAやWSMIなど)が参加しています。WHO(世界保健機構)やIFPMA(国際製薬団体連合会)などもオブザーバーとして加わっており、ICHに参加していない国・地域との情報の共有化も行われています。


ICHガイドラインとは

ICHガイドラインは、前述のICHのメンバーが参加する作業部会で協議・作成されるガイドラインです。

ICHガイドラインは、高品質な医薬品を世界中の医療現場や患者へ届けるために作成されます。このガイドラインは科学的・倫理的に適切と考えられる指針であり、ICHの作業部会では継続的にガイドラインの新規作成や改正を実施しています。


ICHガイドラインとGMPの違い

GMPは「Good Manufacturing Practice(製造管理および品質管理に関する基準)」の略称です。医薬品の品質確保のため、医薬品の汚染防止や人的ミスの防止、品質システムの整備の3原則がまとめられています。

ICHガイドラインとGMPの違いは、ICHガイドラインが国をまたいだ専門家が参加する作業部会で協議されるのに対して、GMPは各国単位または対象単位(製剤GMPや原薬GMPなど)など個別に定められている点です。

GMPは、1960年代~1970年代に制定された米国cGMPを皮切りに、日本GMPやEU GMPなど各国・地域で整備されてきました。しかし、国際的な流通がスタンダードとなった現在の医薬品市場では、国や地域で基準が異なると、医薬品の承認や審査で支障がでかねません。

ICHガイドラインは、各国で整備された基準の世界的な統一化を図る試みのひとつです。ICHの活動により、国ごとに異なる医薬品承認申請書の書式や内容の統一化、GMP基準の統一化が進められています。その活動のなかで、ICH-Q7 GMPにより原薬GMPは統一されました。



ICHガイドラインの4つの分野

ICHガイドラインは大きく4つの分野に分けられ、各分野で提案されたトピックごとに協議を行い、参加するメンバーの合意を得てガイドラインが作成されます。ICHガイドラインの4つの分野は次のとおりです。

  • 品質
  • 安全性
  • 有効性
  • 複合領域

以下では、各分野で協議されている、または合意が形成されたガイドラインを紹介します。


品質に関するガイドライン

ICHガイドラインの品質(Quality)に関するガイドラインは次のとおりです。

  • ICH-Q1 安定性
  • ICH-Q2 分析バリデーション
  • ICH-Q3 不純物
  • ICH-Q4 薬局方
  • ICH-Q5 生物薬品の品質
  • ICH-Q6 規格および試験方法
  • ICH-Q7 GMP(医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)
  • ICH-Q8 製剤開発
  • ICH-Q9 品質リスクマネジメント
  • ICH-Q10 品質システム
  • ICH-Q11 原薬の開発と製造
  • ICH-Q12 ライフサイクルマネジメント
  • ICH-Q13 連続生産
  • ICH-Q14 分析法の開発

品質の分野では、医薬品の安定性や分析バリデーション、規格や試験方法などのガイドラインが定められています。


安全性に関するガイドライン

ICHガイドラインの安全性(Safety)に関するガイドラインは次のとおりです。

  • ICH-S1 がん原性試験
  • ICH-S2 遺伝毒性試験
  • ICH-S3 トキシコキネティクスと薬物動態
  • ICH-S4 毒性試験
  • ICH-S5 生殖発生毒性試験
  • ICH-S6 バイオテクノロジー応用医薬品
  • ICH-S7 薬理試験
  • ICH-S8 免疫毒性試験
  • ICH-S9 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価
  • ICH-S10 光安全性評価
  • ICH-S11 小児用医薬品開発の非臨床試験
  • ICH-S12 遺伝子治療製品の非臨床生体内分布試験

安全性の分野では、がん原性試験や遺伝毒性試験、薬理試験や免疫毒性試験など、主に非臨床の試験や評価に関するガイドラインが定められます。


有効性に関するガイドライン

ICHガイドラインの有効性(Efficacy)に関するガイドラインは次のとおりです。

  • ICH-E1 臨床上の安全性
  • ICH-E2 臨床上の安全性
  • ICH-E3 治験報告書
  • ICH-E4 用量-反応試験
  • ICH-E5 民族的要因
  • ICH-E6 GCP(医薬品の臨床試験の実施基準)
  • ICH-E7 臨床試験
  • ICH-E8 臨床試験
  • ICH-E9 臨床試験
  • ICH-E10 臨床試験
  • ICH-E11 臨床試験
  • ICH-E12 臨床評価
  • ICH-E14 臨床評価
  • ICH-E15 ゲノム薬理
  • ICH-E16 ゲノム薬理
  • ICH-E17 国際共同治験
  • ICH-E18 ゲノム試料の収集およびゲノムデータの取扱
  • ICH-E19 安全性データ収集の最適化
  • ICH-E20 アダプティブ臨床試験
  • ICH-E21 妊婦および授乳婦の臨床試験への組入れ

有効性は、臨床に関する安全性や試験、評価に関する分野です。有効性の分野では同じ名称のカテゴリで内容ごとに細分化されており、例えば「ICH-E7 臨床試験」では高齢者の臨床試験の評価法に関するガイドラインが、「ICH-E8 臨床試験」では臨床試験の一般指針として、臨床試験を実施するにあたっての原則や留意事項等が定められています。


複合領域に関するガイドライン

ICHガイドラインの複合領域(Multidisciplinary)に関するガイドラインは次のとおりです。

  • ICH-M1 ICH国際医薬用語集
  • ICH-M2 医薬品規制情報の伝送に関する電子的標準
  • ICH-M3 臨床試験のための非臨床試験の実施時期
  • ICH-M4 CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)
  • ICH-M7 潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価および管理
  • ICH-M8 eCTD(電子化コモン・テクニカル・ドキュメント)
  • ICH-M9 BCS バイオウェーバー
  • ICH-M10 生体試料中薬物濃度分析法バリデーションおよび実試料分析
  • ICH-M11 電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書(CeSHarP)
  • ICH-M12 薬物間相互作用
  • ICH-M13 即放性経口固形製剤の生物学的同等性試験
  • ICH-M14 安全性評価でRWDを活用する薬剤疫学調査の計画・デザインに関する一般原則
  • ICH-M15 Model-Informed Drug Development(MIDD)

複合領域は前述の3つの分野(品質・安全性・有効性)の複数領域に関わるガイドラインです。国際的な医薬用語集や情報伝送の電子的標準などが定められています。



ICHガイドラインの合意・批准プロセス

ICHガイドラインは、大きく5つのステップを踏んで合意が形成されます。準備段階を含めた各ステップの内容は次のとおりです。

ICHで合意形成されたガイドラインは、各国・地域の規制当局それぞれの手続きにより実施されます。日本の場合、採択後に厚生労働省医薬局より通知が行われます。



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品質が高く、有効性や安全性が担保された新薬の提供は、多くの医療関係者や患者が必要としています。そして、医薬品は人の身体に直接作用するものであることから、医薬品の承認には慎重な審査や規制が求められます。

ICHガイドラインは、医薬品の承認や審査が速やかに行われるための手段のひとつです。多くの国や地域で共通する手法や実験データの取得方法を導入すれば、承認や審査にかかる期間の短縮につながり、より早期に患者へ提供する環境づくりに貢献するでしょう。

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▶監修:牧崎茂

株式会社プロアクティブコンサルティング 代表
2009年4月に中小企業診断士としてまた、久光製薬㈱での薬事監査業務の経験を活かし、GXP QAコンサルタントとして独立。GMP工場のコンサルティング、監査業務を含む、GXP(GLP, GCP, GVP等)に関連した幅広いエリアでのGXP及びQMSの構築に関する専門家として活動を行っている。


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