医薬品開発に必要なプロセスと期間とは?現状の課題や今後の展望も解説

医薬品開発事業に新規参入する場合、事前に医薬品開発のプロセスや関連法令、課題を把握しておく必要があります。

本記事では、医薬品開発のプロセスや開発に必要な期間、関連法令、現状の課題と展望を解説します。医薬品開発ベンチャーの立ち上げを検討中の方や、他業界・他業種の企業を経営していて医薬品開発分野に進出しようとお考えの方は、ぜひ最後までご一読ください。



医薬品開発のプロセス

医薬品開発は、大まかに以下の流れで進みます。

  1. 基礎研究
  2. 非臨床試験
  3. 臨床試験
  4. 申請・審査・承認
  5. 販売
  6. 調査

以下で、各プロセスに関して詳しく説明します。


①基礎研究

基礎研究は、医薬品の候補に適した物質を探したり合成したりする段階です。天然化合物や人工的に合成された化合物に関して、主に動物の細胞片を用いて活性を調べて、幅広く探索が実施されます。

活性がある物質(リード化合物)が発見されたら、さらに活性が強い化合物を求めてリード化合物に修飾を施し、多様な誘導体が作られます。

なお、基礎研究の段階では、主に薬効にフォーカスを当てて研究が実施されます。


②非臨床試験

非臨床試験(前臨床試験)は、基礎研究で絞り込まれた化合物の薬効・薬理・代謝などに関して、動物を用いてテストを実施する段階です。

多くの製薬会社では、この段階から、研究開発部門だけではなくマーケティング・渉外など、様々な部門のトップが出席する最高意思決定機関で方針が決定されます。


③臨床試験

臨床試験(治験)は、有効性・安全性を確認するために、ヒトを対象に治験薬(開発候補品)を投与する段階です。臨床試験は、以下の3フェーズで構成されます。

なお、臨床試験は、医薬品開発の全プロセスのなかで最も長い時間がかかるプロセスです。一般的に10年以上の期間を要します。


④申請・審査・承認

臨床試験が無事に終了したら、厚生労働省に対して医薬品の承認申請を行います。申請後、専門家によって成分・分量や用法・用量、効能・効果、副作用などに関する所要の審査が実施され、承認されると薬価が決定され薬価基準に収載されます。

申請に必要な資料や申請方法の詳細は、厚生労働省の公式サイトなどから確認ができます。不明な点がある場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談してください。


⑤販売

薬事・食品衛生審議会の審議を経て厚生労働大臣によって承認されたら、医薬品として製造・販売が可能です。

ただし、研究開発段階で発見できなかった副作用が存在する可能性もあるため、販売開始後も継続的に安全性や副作用の調査を実施しなければなりません。


⑥調査

販売開始後も、継続的に安全性(副作用・使い方など)に関する調査を実施する義務があります。何らかの問題点が判明した場合は、より安全で使いやすい医薬品に改善し、当局に変更管理の手続きをして承認を得なければなりません。

多くの製薬企業では、医薬情報担当者(MR、Medical Representative)が、安全性に関する情報収集業務を担当します。



医薬品開発に必要な期間

医薬品開発に必要な期間は、全段階合計で9~17年程度です。以下では、開発段階ごとに必要とされる期間の目安を示します。

  • 基礎研究:2~3年
  • 非臨床試験:3~5年
  • 臨床試験:3~7年
  • 申請・審査:1~2年

また、開発成功率の推移は以下のとおりです。

年々、医薬品開発の成功率が減少(難易度が上昇)する傾向にあります。



医薬品開発に関する法令・ルール

医薬品の研究開発では、被験者に健康被害が生じる可能性があります。また、販売後に欠陥が判明し、患者に健康被害が発生すると大きな社会的影響が生じるため、数多くの倫理規範・ガイドラインなどが定められています。

これまで、ニュルンベルグ綱領(1947年)や世界医師会によるヘルシンキ宣言(1964年)、米国ベルモント報告(1979年)、欧州臨床試験指令(2001年)、国際医学団体協議会(CIOMS)によるガイドライン(2002年)など、数多くの規範・ガイドラインが策定され、臨床研究に関する原則が形作られました。

現在の日本では、以下に示す法令などにより、治験の規制が実施されています。

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)
  • 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GLP、治験薬GMP、GMP、GCPなど)

これらの法令に違反すると、刑事罰が科されるケースもあるので注意が必要です。例えば、承認前医薬品の広告・宣伝を行うと、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科される(または、併科される)可能性があります。

法令違反をすると承認が得られず、せっかく開発した医薬品も販売できません。事前に各種法令を熟読し、不明な点がある場合は厚生労働省やPMDA、専門家などに相談しましょう。



日本国内における医薬品開発の現状と展望

以下、日本国内における医薬品開発の現状と課題、および、今後の展望に関して説明します。


医薬品開発の現状と課題

1993年時点では、日本の大手製薬会社の研究開発費は、アメリカの大手製薬会社の研究開発費の36%程度でした。2019年時点では、約22%の水準にまで下落しています(※)。

また、近年、世界各国でベンチャー企業による医薬品開発が活発ですが、日本では創薬ベンチャーによる開発事例は多くありません。


今後の展望

近年、世界各国で創薬ベンチャーが活躍していますが、日本ではベンチャー企業による医薬品開発が低調です。この実情を受け、日本政府はベンチャー企業による開発を支援するために多種多様な施策を実施しています。以下は、施策・取り組みの具体例です。

  • 産学官共同創薬研究プロジェクト(GAPFREE)
  • 全ゲノム解析等実行計画
  • バイオコミュニティ形成支援
  • 資金提供
  • 税制優遇

産学官共同創薬研究プロジェクトは、アカデミア(大学・研究機関)が保有する知見・技術と、製薬会社の創薬ノウハウをつなげる取り組みです。また、全ゲノム解析等実行計画は、難病の効果的な治療法の開発に役立ちます。

産業界・大学・自治体が参画するバイオコミュニティ形成支援も重要な施策のひとつです。人材・投資の呼び水となる支援策を継続的に追加・充実させる方針が示されているため、今後、日本発の医薬品の増加が期待されています。

なお、バイオ医薬品のCMO/CDMO市場は成長を続けており、年率8%程度の成長が見込まれています。現時点では、グローバル市場でスイス・韓国・ドイツの企業が活躍しており、日本企業の存在感は大きくありません。しかし、日本国内では、新たな会社の設立やM&Aなどによる既存事業の拡大や新規事業の立ち上げが進み、積極的な投資がここ数年急速に図られています。

CDMOに関してより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:CDMO(医薬品開発製造受託機関)とは?CMOとの違いや活用するメリットを解説



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プロセスの流れや課題を把握して、医薬品開発に取り組もう

医薬品の開発プロセスは、基礎研究、非臨床試験、臨床試験(治験)の順番で進行します。その後、厚生労働省に承認申請を実施し、審査に通過したら医薬品として製造・販売が可能です。なお、副作用などに関する調査は、販売開始後も継続的に実施する必要があります。

医薬品の開発には長い年月がかかり、成功率は決して高くありません。また、各種法令を遵守する必要もあります。日本政府は、創薬ベンチャーを育成するための施策を実施しているので、今後の動向に注目したいところです。

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▶監修:橋本 光紀

医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役。
九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研に海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。


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