プラシーボ効果とは?臨床試験で偽薬を使う目的や身体への影響、倫理的課題を解説
人は有効成分を含まない偽薬の服用で症状の改善が見られる場合があり、「プラシーボ(プラセボ)効果」といわれています。プラシーボ効果の概念を提唱したのはハーバード大学のヘンリー・ビーチャー医師であり、近年では広く認知されている効果です。
本記事では、プラシーボ効果の概要と医薬品の臨床試験でプラシーボを使う理由を解説します。あわせてプラシーボの服用が身体に与える影響や倫理的課題も紹介します。
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プラシーボ効果とは?
プラシーボ(プラセボ)効果とは、もともと薬としての有効成分を持たないプラシーボ(偽薬)の服用で、症状の改善などが見られることです。プラシーボには、デンプンや乳糖で製造された錠剤、食塩の濃度が0.9%の生理食塩水などが用いられます。
プラシーボは、ラテン語の「私は満足するだろう」という意味の言葉に由来しています。英語やフランス語では「placebo」と表現され、英語の「please」も同じラテン語を起源とする言葉です。
プラシーボ効果は、例えば痛みや下痢などの症状に対して効果があるといわれています。一方で、プラシーボの服用は副作用が出る場合もあり、注意が必要です。
医薬品の臨床試験でプラシーボを使う理由
プラシーボは、医薬品の臨床試験(主に二重盲検比較試験)で、薬の有効性や安全性を確認するために使用されます。どのような薬であっても、プラシーボ効果による症状の改善が生じる可能性があるためです。
対象となる医薬品の試験だけでは、臨床試験に参加した方に生じた効果が医薬品の有効成分によるものなのか、プラシーボ効果によるものなのかを判断できません。対象となる医薬品とプラシーボの効果を比較し、プラシーボよりも副作用が少なく、効果があると検証されてはじめて、新薬として認められます。
プラシーボを使用した二重盲検比較試験とは
プラシーボが使用される二重盲検比較試験(Double Blind Test)とは、一般に「二重盲検法」と呼ばれており、被験者も医師もどの薬が投与されたかわからない条件で行われる比較試験です。被験者だけでなく医師にも情報を知らせない理由は、医師が情報を知ったことによる処置や評価への影響を避ける点にあります。
二重盲検比較試験は、新薬が投与される処置群とプラシーボ(または既存薬)が投与される対照群に分けて実施されます。処置群と対照群の割合は「処置群2:対照群1」など様々です。
プラシーボ効果が身体に与える反応
プラシーボの服用で効果が出る理由は、人間の身体が持つ自然治癒力を基に、治癒への期待や暗示の効果などが複合しているためと理解されています。
例えば、プラシーボを服用したと同時に自然な治癒力で症状が改善すると、「プラシーボを飲んで良くなった」と受け止められる場合があります。また、「薬を飲んだから症状が良くなる」といった期待や暗示も、症状を改善へとつなげる理由です。
なお、プラシーボ効果は厳密にいうと「効果」ではなく、プラシーボの服用により人間の身体が引き起こす「反応」です。プラシーボの投与で骨折による痛みが緩和されたケースのように、病気の治癒ではなくその症状に影響を与える傾向が見られます。
プラシーボによる「ノセボ効果」
ノセボ効果(ノシーボ効果、反偽薬効果)とは、有効成分が含まれていないプラシーボの投与で起こる副作用・有害作用です。ノセボ(Nocebo)は、ラテン語で「私は傷つくであろう」の意味を持ちます。
プラシーボは通常、デンプンや乳糖などを不活性化した成分で作られるため、服用しても人体への影響はほとんどありません。
しかし、飲む方が「薬」として服用し、「薬の服用で症状が悪化するかもしれない」という心理が起きた場合、副作用が生じるリスクが存在します。
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プラシーボの使用に関する倫理的原則と課題
プラシーボの使用は、良い結果につながる場合もあれば望まない作用が生まれる可能性もあるため、注意が必要です。以下では、ヘルシンキ宣言で定められている原則とプラシーボを使用した試験の課題を解説します。
ヘルシンキ宣言で定められている原則
ヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする生物医学的研究に携わる医師のための勧告)は、人間を対象とする研究の倫理的規範を定めた宣言です。1964年にフィンランドのヘルシンキで開催された世界医師会総会で採択されました。採択後に9回の改訂がなされており、2013年の改訂が最新です(2024年6月時点)。
ヘルシンキ宣言第33項では、プラシーボの使用は有効であると証明された治療が存在しない場合に認められるとされています。第33項にはプラシーボを使用する場合の条件も記載されており、乱用を避けるための最大限の配慮が必要としています。
※出典:日本医師会「WMAヘルシンキ宣言」
プラシーボを使用した試験の倫理的課題
プラシーボは医薬品の臨床試験などで用いられますが、有効な治療がない場合や重大な障害が生じない場合には、プラシーボの使用は倫理的に問題ないとする考え方が一般的です。
倫理的問題が発生するケースは、すでに有効な薬や治療法がある際にプラシーボを使用する場合です。
国際医学団体協議会(CIOMS)が定める指針では、プラシーボを使用する「必要不可欠な科学的理由の存在」や「最小限をわずかに超えるリスクの増加」などが認められる場合、プラシーボを対照群に使用できると示しています。
医薬品に関する情報収集に「インターフェックスWeek」の活用を
プラシーボを使用した比較試験は新薬の開発に欠かせない試験であり、医薬品の研究・製造技術は日々進歩しています。医薬品に関する情報収集を行いたい方は、ぜひ「インターフェックスWeek」をご活用ください。
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展示会は、東京と大阪で年2回開催されます。インターフェックスWeek 東京には注目技術テーマの展示ゾーンもあり、最新の知見に触れたい方におすすめです。
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■インターフェックスWeek 大阪
2025年2月25日(火)~27日(木) インテックス大阪
■インターフェックスWeek 東京
2025年7月9日(水)~11日(金) 東京ビッグサイト
※一部の講演は有料です。
医薬品の検証にプラシーボを用いた臨床試験は必要なプロセス
医薬品の有効性や安全性を検証する場合に、プラシーボを使用した比較試験は有効なプロセスです。ただし、プラシーボの服用で副作用や有害作用が生じる可能性もあるため、取扱には注意しましょう。
医薬品の研究・製造技術に関する情報を収集したい方は、ぜひインターフェックスWeekにご来場ください。出展社が提供する最新技術に触れられ、技術トレンドの把握に役立ちます。医薬品に関連する方が多数ご来場することから、お持ちの技術や製品のアピールに適しています。
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▶監修:武藤 正樹
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事
神奈川県出身。1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院外科医師、ニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学、国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。国立長野病院、国際医療福祉大学三田病院、国際医療福祉大学大学院教授等を経て、2020年より現職。日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事
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