OTC医薬品とは?メリットや安全に服用するためのポイントを解説!
セルフメディケーションという言葉を聞いたことがあるでしょうか?セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」とWHOで定義されています。
近年、急速な高齢化に伴う医療費削減や逼迫する医療現場の緩和のため、セルフメディケーションの重要性がいっそう高まっています。ドラッグストアなどで手軽に購入できるOTC医薬品の活用は、セルフメディケーション推進において重要な役割を担っているといえます。
そこで本記事では、OTC医薬品の定義や分類、メリットなどを紹介します。安全に服用するためのポイントや購入時の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
2025.2.25(火)-27(木) インテックス大阪で開催!
医薬品・化粧品・再生医療の研究・製造に関する最新情報が一堂に
OTC医薬品とは?
OTC医薬品は「Over The Counter」の略で、薬局やドラッグストアなどで、処方箋がなくても購入できる医薬品の総称です。はじめに、医療用医薬品との違いやOTC医薬品の分類を紹介します。
医療用医薬品との違い
医療用医薬品は、医師の処方箋に基づき薬剤師が調剤する医薬品です。医師よって患者の症状や体質に応じた適切な成分が選択され、具体的な使い方や注意点は受け渡し時に薬剤師から説明を受けます。
一般的に、OTC医薬品よりも効果が高いのですが、その分副作用もあるため、服用に際してより厳密な注意が必要です。
それに対し、OTC医薬品は自身の判断で購入・服用することが前提とされています。安全性が重視されており、比較的リスクの少ない成分が使用されているのが特徴です。また、医療保険は適用外ですが、一部のOTC医薬品は後述する「セルフメディケーション税制」によって所得控除を受けることができます。
OTC医薬品の分類と販売ルール
2024年9月13日現在、OTC医薬品は薬機法で定められたリスクの程度によって、要指導医薬品と一般用医薬品(第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品)に分類されます。
要指導医薬品とは、OTC医薬品としてはじめて販売される成分を含み、取り扱いに注意が必要な薬が該当します。
また、一般用医薬品は、副作用などのリスクが高い順に第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品と分類されています。これらのOTC医薬品は、分類ごとに販売ルールが細かく決められているのが特徴です。
OTC医薬品を活用するメリット
OTC医薬品を活用するメリットは、大きく分けると3つあります。メリットを理解することで、OTC医薬品をより有効に活用できるでしょう。
医療機関を受診する必要がない
OTC医薬品は医療機関に受診する必要がなく、医療機関があいていない時間帯にも身近な店舗で購入できます。忙しくて受診できない場合や急に体調が悪くなった時に、手軽に購入できる点は大きなメリットです。
費用が安く済むこともある
医療機関を受診した場合、薬局での支払いに加えて医療機関での診察料や検査費などが別途必要となります。そのため、場合によってはトータルでは市販薬と変わらない、もしくは市販薬の方が安く済んでしまうこともあります。
症状の早期対応が可能
軽度の症状や急な体調不良の際に、迅速に対応できるのもOTC医薬品の大きな利点です。必要に応じて手軽に購入できる上、有効期限内であれば服用できるため、常備薬として自宅に保管しておくことも可能です。
スイッチOTCとは?
スイッチOTCとは、医療用医薬品として使用されていた成分のうち、OTC医薬品に転用された医薬品をさします。ここからは、スイッチOTCの役割や条件、セルフメディケーション税制について解説します。
スイッチOTCの役割
スイッチOTCは医療用医薬品と同じ成分を使用しているため、通常のOTC医薬品よりも高い効果が期待できます。また、セルフメディケーション実施における選択の幅を広げるためにも、スイッチOTCの普及は重要な役割を担っているといえます。
スイッチOTCの条件
スイッチOTC化する上で、必要な条件は主に以下の5つになります。
- 医療用医薬品としての使用実績があり、副作用の発生状況などからOTC医薬品として適切である
- 人体に対する作用が著しくなく、医師による薬剤選択や用量調整を必要としない
- 習慣性、依存性、耽溺性がない
- 薬物相互作用により重篤な副作用が発生しない(「使用上の注意」で対応できる範囲)
- 著しい原疾患以外の症状をマスクするリスクや医療機関への受診が遅れるリスクについて、講じる対策によって許容可能となる
片頭痛や血圧の薬、緊急避妊薬など様々な成分がスイッチOTCの候補となる成分として挙げられ、検討されています。今後ますますスイッチOTCの品目数は増えていくことでしょう。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として2017年1月1日に導入された税制度です。健康診断や予防接種などの健康維持活動を行っている人が特定のOTC医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができます。
従来の医療費控除は申請条件が100,000円以上でしたが、セルフメディケーション税制においては年間12,000円以上で申請できます。なお、控除の対象となるのは12,000円を超えた部分の金額で、最大で88,000円までの控除が可能です。
厚生労働省が公表している資料によると、2024年9月4日時点では、2848品目のスイッチOTC、4250品目の非スイッチOTCがセルフメディケーション税制の対象商品となっています。
制度開始当初はスイッチOTCに限られていたのですが、2022年以降はスイッチOTC以外の商品も対象として追加されるようになり、より活用しやすくなりました。
OTC医薬品を安全に服用するためのポイント
続いてはOTC医薬品を安全に購入、服用するためのポイントを解説します。
用法用量を守って正しく服用する
使用前に用法用量や注意事項を十分に確認し、それらを守って正しく服用することが大切です。誤った使用法では効果が発揮されない場合があるだけでなく、健康に悪影響を与える可能性もあります。
長期間の使用は控える
OTC医薬品は、軽度の症状に対して短期間の使用が前提とされており、長期間の使用は健康に悪影響を与える可能性があります。また、一定期間服用しても症状が改善しない場合は、病院に受診する必要があるといえます。
自己判断で薬を併用しない
自己判断で薬の併用はせず、医師や薬剤師に確認をしましょう。同じ成分が含まれている場合、過剰摂取となり副作用のリスクが高まります。また、違う成分であっても相性が悪く、薬の効果が減弱もしくは増強されてしまうことがあります。
アレルギーや副作用に注意
比較的安全性の高い成分を使用しているとはいえ、薬である以上アレルギーや副作用のリスクはあります。今まで服用した際に問題なかったとしても、今後も同じ状況が続くとはいい切れません。そのため、気になる症状がみられる場合は服用を中止し、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
妊娠中や授乳中は事前に相談する
妊娠中や授乳中の方は自己判断で服用せず、必ず事前に医師や薬剤師に相談しましょう。一部の薬は胎児や授乳中の赤ちゃんに影響を与える可能性があるため注意が必要です。妊娠中や授乳中における薬の服用は、薬の服用による胎児や新生児への影響より母体の治療上の有益性があるかどうか、慎重に検討する必要があります。
インターネットで買う時の注意点
インターネットで一般用医薬品(第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品)を購入する際は、以下の2点に注意して購入するようにしましょう。
- 使用者情報について正しく回答する
- 信頼できる販売サイトを利用する
購入者は注文する際にサイト上の様式もしくはメールで、性別や年齢、症状といった使用者の状態に関する情報を回答する必要があります。回答した情報は薬剤師が確認して販売の可否を判断するため、正しく回答するようにしましょう。第一類医薬品は、販売時に薬剤師から薬の飲み方や副作用、注意事項などの情報提供が行われます。
また、販売ルールを遵守した販売サイトで購入することも重要です。なかには海外製品の個人輸入や一般用医薬品の販売許可を得ていない違法な販売サイトもあり、偽造医薬品である場合や健康被害に繋がる可能性もあります。効果の高さや価格の安さを標榜している広告に惑わされることなく、信頼できる販売サイトで購入するようにしましょう。
医薬品業界の最新トレンドについて知りたいなら「インターフェックスWeek」への来場がおすすめ
「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される展示会です。RX Japanが主催しており、再生医療分野に関する最新技術やサービスを紹介している「再生医療EXPO」も同時開催されます。
医薬品開発・製造の技術展示に加え、様々なテーマでカンファレンスも併催されるため、医薬品業界の最新トレンドや今後の業界動向に関する知見を深めたい事業者様におすすめです。事前登録の上ご来場ください。
業界の専門家や様々な企業が集まり、商談が活発に行われる場でもあります。サービスの比較検討で来場される専門家も多いため、関連サービス提供している企業様は、ぜひ出展もご検討してみてはいかがでしょうか。
「インターフェックスWeek」の開催地・日程は以下のとおりです。
■インターフェックスWeek大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)インテックス大阪
■インターフェックスWeek東京
2025年7月9日(水)~11日(金)東京ビッグサイト
OTC医薬品を正しく使ってセルフメディケーションをはじめよう
日本人の高齢化や生活習慣病の増加、それらに伴う医療費の増加は今後も続くことが予想されており、セルフメディケーションの重要性はますます高まるといわれています。また、新たなスイッチOTCの候補となる様々な成分が日々検討されており、今後さらなる品目数の拡充が見込まれています。セルフメディケーションを実施する上での選択肢がさらに増えることでしょう。
RX Japan主催の「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される日本最大級の展示会であり、様々な分野の専門家と情報共有や技術相談、商談も行うことができます。医薬品業界に関する知見を深めたい方や、医薬品製造に関する技術をお持ちの方は、ぜひインターフェックスWeekへの来場・出展をご検討ください。
▶監修:山本 佳奈
ナビタスクリニック内科医、医学博士
1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)での勤務を経て、現在、ナビタスクリニック(立川)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
▼この記事をSNSでシェアする