治験とは?実施のルールや3つのステップ、創薬の流れを解説!
医療の進歩に伴い、現在まで多くの薬が開発されてきました。薬の候補となる新規物質の発見から始まり、新薬として承認されて実際に医療現場で使われるまでには、様々なプロセスとそれに伴う長い時間を必要とします。
治験は新薬の開発プロセスのなかで、重要な役割を担っています。しかし、治験の具体的な内容や進行方法、ルールまで知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では治験の概要や目的、新薬開発における位置付けを解説します。治験を実施する上で遵守すべきルールや、治験がどのようなステップで実施されるかについてもあわせてご紹介します。
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治験とは?
治験とは、新たな薬や治療法の有効性と安全性を評価するために行われる臨床試験の一種です。人に対して実際に使用して評価することを一般的に臨床試験といいますが、そのなかでも未承認の薬や医療機器について、厚生労働省の承認を得ることを目的として行うものを特に治験と呼びます。
創薬の流れ
新薬が世に出るまでには様々な試験を行い、有効性や安全性を評価する必要があります。創薬のプロセスとしては、下記の6段階に分類できます。
- 基礎研究
- 非臨床試験
- 臨床試験(治験)
- 承認申請と審査
- 承認と販売
- 製造販売後調査
薬の候補となる新規物質の発見から新薬として承認されるまでには、一般的に10年以上の期間を要するといわれています。人間を対象としている臨床試験(治験)は、創薬プロセスのなかでも重要なステップであり、3〜7年程度かかる場合が多いです。
治験の3つのステップ
治験は通常、第I相から第Ⅲ相までの3つのステップがあり、第I相から順に実施されます。各ステップの概要について解説します。
第I相臨床試験(Phase I)
第I相臨床試験(Phase I)は、新薬候補を人にはじめて投与する重要なステップであり、臨床薬理試験とも呼ばれます。通常は少人数の健康な成人を対象に半年〜1年程度の期間実施され、主に安全性と薬物動態について評価することを目的としています。
一般的に少量から投与をはじめ、段階的に投与量を増やしていきます。副作用などの有害事象の有無や血液中・尿中に含まれる薬の量を測定し、体内での吸収速度や排泄までにかかる時間などを調べます。
第II相臨床試験(Phase II)
第II相臨床試験(Phase II)は、病気に対する有効性や安全性を評価するステップで、探索的試験とも呼ばれます。数百人程度の比較的少数の患者を対象とし、プラセボを含めた複数の投与量で比較検討を行うのが一般的です。
さらに、投与量や投与間隔、投与期間などの具体的な薬の使い方についても検討します。医師と患者のどちらにも新薬候補かプラセボかわからないようにする二重盲検法など、試験ごとに適した試験デザインが用いられます。
第III相臨床試験(Phase Ⅲ)
第III相臨床試験(Phase Ⅲ)は、第Ⅰ相および第II相で得られたデータをもとに、より大きな規模で有効性や安全性、使い方について評価を行う最終段階で検証的試験とも呼ばれます。通常数百~数千人の多数の患者を対象に実施され、既存の治療法で用いられる薬もしくはプラセボと比較検討を行います。
また、長期使用時における有効性や安全性もあわせて調べます。第Ⅰ〜III相の3つのステップを経て有効性と安全性が確認されると、製薬会社は厚生労働省に承認申請を行います。そして、承認されると正式に薬としての販売が可能となります。
治験実施時のルール
治験参加者の権利と安全を最大限守るため、および新薬候補の有効性や安全性について科学的な方法で正確に調べるため、治験の実施に関して厳格なルールが定められています。製薬会社や病院は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」という法律と、これに基づいて厚生労働省が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」という規則、この2つを守らなければなりません。
この法律と規則で定められているルールについて、具体的に以下で解説します。
厚生労働省への治験実施計画書の提出
新薬を開発している製薬会社は、治験を担当する病院の医師が合意した「治験実施計画書」を作成し、厚生労働省に提出する必要があります。治験実施計画書とは、治験の目的や治験のデザイン、対象者、実施方法、評価基準などを記載した文書のことで、プロトコールとも呼ばれます。
そして、届出を受けた厚生労働省は、治験実施計画書の内容および新薬候補について調査し、問題がある場合は修正や変更などの指示を出します。
治験審査委員会による事前審査
治験を開始するにあたって、治験審査委員会による治験内容の事前審査が必須です。この審査では、主に以下の点が確認されます。
- 治験参加者の人権や福祉が守られているか
- 新薬候補を科学的に調べられる計画になっているか
- 治験を行う医師が適切か
- 参加者に治験内容を正しく説明するようになっているか
治験審査委員会には、医療を専門としない人や病院と利害関係のない人が必ず参加します。そして、治験を実施する病院は治験審査委員会の審査を受け、その指示に従わなければいけません。
インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントは、医療行為において患者が十分な説明を受けた上で同意するプロセスをさします。治験を実施するにあたっては、参加者に治験の目的や実施方法、期待される効果、副作用などのリスクについて、治験を行う医師などから十分に説明し、文書による同意を得る必要があります。
また、参加者の意思でいつでも治験を中止することが可能である旨についても説明が必要です。インフォームド・コンセントは治験に関する十分な理解を得るためだけでなく、参加者の人権や安全を尊重するためにも重要な手続きです。
発生した重大な副作用の報告
治験参加者に重大な副作用が発生した場合、病院から連絡を受けた製薬会社は厚生労働省に報告することが義務付けられています。また、参加者の安全を保護するため、必要に応じて治験の見直しが行われることもあります。
製薬会社による治験の適正な実施の確認
治験を依頼した製薬会社のモニターと呼ばれる担当者は治験の進行を調査し、治験実施計画書やGCPの規則を守って適正に行われているかを確認する必要があります。
この確認作業はモニタリングと呼ばれ、治験の信頼性を向上させる上で不可欠です。治験責任医師は、必要に応じてモニターや実施医療機関と情報交換をし、整合性を確認します。
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治験は新薬開発における重要なプロセス
治験は、新薬候補の有効性や安全性について人を対象として確認するための臨床試験であり、新薬開発で最も重要なプロセスです。科学的に正しく評価することは重要ですが、治験参加者の人権や安全の保護を最優先に実施する必要があります。
そのため、製薬会社や病院は「医薬品医療機器等法(薬機法)」「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」の2つを守らなければいけません。治験は3〜7年かかることが多く、新規物質の発見から新薬として承認を得るまでには10年以上の歳月を要します。
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▶監修:山本 佳奈
内科医、医学博士
1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)、ナビタスクリニック(新宿・立川)内科医での勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
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