MR(医薬情報担当者)に資格は必要?仕事内容や年収、認定試験の概要を解説

就職活動や転職活動をしているなかで、「MRってどんな仕事?」「MRの年収相場は?」「MRになるために必要な資格は?」などの疑問を抱いたことある方も少なくないかと思います。

そこで本記事では、MRの仕事内容や年収、MRになる方法などについて解説します。MR認定試験の概要や2026年度の新制度についてもあわせて紹介するので、MRを目指している方はぜひご一読ください。




MRとは?

MRはMedical Representativeの略で、医薬情報担当者とも呼ばれます。医療機関に勤める医師や薬剤師に、医薬品情報の提供を行う役割を果たしています。医薬品には、医師が処方する「医療用医薬品」とドラッグストアなどで購入できる「一般用医薬品」がありますが、MRが扱う医薬品は「医療用医薬品」です。

ここでは、MRの具体的な業務内容と年収相場について紹介します。


MRの業務内容

MRの主な業務は「医薬品情報の提供」「医薬品情報の収集」「情報の提供」に分類することができます。

上記業務に加えて、競合他社の動向調査や市場調査も行います。医療現場でのニーズや自社製品の優位性について把握することで、戦略的な営業活動に役立てることができます。


MRの年収相場

MRは専門性の高い職種であり、どの年代においても年収の水準は高い傾向にあります。令和5年賃金構造基本統計調査の結果によると、MRの年収の全国平均(令和5年度)は579.5万円であり、年齢別の平均年収をまとめると以下になります。

  • 25〜29歳:470.55万円
  • 30〜34歳:524.21万円
  • 35〜39歳:572.25万円
  • 40〜44歳:642.51万円
  • 45〜49歳:653.04万円
  • 50〜54歳:718万円
  • 55〜59歳:745.04万円
  • 60〜64歳:496.36万円


MRと薬剤師の違い

ここでは、仕事内容や学歴、資格などの観点からMRと薬剤師の違いについて解説します。


仕事内容

前述したように、MRは医師や薬剤師などの医療従事者に医薬品情報を提供するのが主な仕事です。

それに対して、薬剤師は医師が交付する処方箋に基づいて調剤を行い、患者さんに服薬指導を行った上で薬を提供するのが主な仕事です。また、薬の飲み合わせや患者のアレルギー歴、副作用歴などを確認し、処方された薬について問題がある場合は医師に問合せを行います。

MRと薬剤師、それぞれ患者さんとの関わり方に違いはありますが、どちらも医療の一端を担う重要な職業であることは間違いありません。


学歴要件・資格有無

MRに必須の学歴や資格はなく、製薬会社やCSO(Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関)にMRとして採用されれば就業することができます。また、業務上、病院や薬局に訪問しなければならないので、普通自動車免許を持っていると便利でしょう。

それに対し、薬剤師になるには薬剤師免許の取得が必須です。薬剤師免許を取得するには6年制大学の薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格しなければなりません。



MRになる方法

MRの入社先は、製薬会社やCSOです。前述のとおり、MRに必須の学歴や資格はありませんが、「大卒以上」や「薬学・理学・化学・農学・生物学系の学部を卒業した人」などを条件としている企業もあります。応募前に、各企業の募集要項を確認しましょう。

入社後は、導入教育と呼ばれる共通カリキュラムを受け、医学・薬学の知識や疾病の知識、関連法規などを学びます。導入教育を修了後、公益財団法人MR認定センターが実施するMR認定試験を受けて合格し、実務経験を終えるとMRの認定証が発行されます。

就職・転職活動では、求人サイトや転職エージェントを利用して求人募集を探すのが一般的です。非公開の求人を出している製薬会社も多く、エージェントを介さないと得られない情報もあるため、積極的に活用しましょう。最近では、MRに特化した転職エージェントも増えています。

また、企業の採用動画を通じてリアルな社風や職場環境を確認できるプラットフォームを活用することで、手軽に企業理解を深めることができます。



MR認定証とは?

公益財団法人MR認定センターから発行されるMR認定証は、MRとして最低限必要な知識や技能、倫理観を評価するための資格証明書です。MR認定証を取得することで医師や薬剤師からの信頼を得やすくなるとともに、転職活動において応募条件となっていることもあります。

基礎的資質を養う導入教育(基礎教育・実務教育)という研修を受けた後、MR認定試験と6ヶ月の実務経験を経てMR認定証が発行されます。導入教育を修了していればMR認定証の有無にかかわらずMRとして就業できますが、未取得の場合は業務の幅が制限されることがあり、取得を義務付けている製薬会社も多数存在します。

MR認定証を取得後は、基礎的資質を維持するために年に1度の継続教育を履修する必要があります。継続教育は、導入教育と同様に、基礎教育と実務教育から構成されています。また、5年ごとの更新も必要です。医療現場で働く医師や薬剤師に信頼されるMRになるには、認定証取得後も日々の自己研鑽がとても大切です。



MR認定試験の概要

現行の受験資格や試験科目、難易度・合格率、実施時期などMR認定試験の概要について、以下で詳しく解説します※。

※2025年1月時点


試験実施地域・時期

試験は、東京と大阪の2ヶ所で開催されます。例年、実施時期は12月、受験申請の締め切りは9月末です。なお、科目免除の対象者については、受験申請締め切り日よりも前の期限までに資格証明を送付する必要があります。


受験資格

MR認定試験の受験資格は以下になります。

  1. 導入教育または導入教育の基礎教育を修了認定された未受験者
  2. MR認定試験不合格者(再受験者)
  3. MR認定証の失効者のうち、有効期限から4年以上経過している者
  4. MR認定試験合格証の有効期限内にMR認定証の交付申請をしなかった者
  5. MR認定要綱 第36条の規定に基づき、MR認定証が取り消された日から3年以上経過した

なお、「2. MR認定試験不合格者(再受験者)」については、初回の受験年月から5年を経過した場合は全科目受験となります。


試験科目

MR認定試験の試験科目は下記3科目です。

  • 医薬品情報:80問
  • 疾病と治療:110問
  • MR総論:80問

1問1点で構成されており、いずれの科目もMRテキストから出題されます。なお、医師や歯科医師、薬剤師は「医薬品情報」「疾病と治療」の2科目を免除でき、再受験者については不合格科目のみ受験します。


難易度・合格率

第30回(令和5年度)MR認定試験の合格率は、新規受験者88.0%、再受験者58.0%の合計で83.8%であり、第1回〜30回合計(第27回を除く)の合格率は79.5%でした。なお、過去合計の合格率が最も低かったのは第7回の70.9%です。

全教科の合計点数で合否が決まるのではなく、各科目で合格水準を満たす必要があります。具体的な合格ラインは不明ですが、例年は7〜8割といわれています。後述する26年度抜本改革では、改善したいとの意向があります。



新制度で変更されるポイント

現在の要綱では、MR教育を新卒者に対する「導入教育」とすでにMRとして活動している人に対する「継続教育」に分け、それぞれ「基礎教育」と「実務教育」を行うとしています。

新要綱では、「導入教育」と「継続教育」の区分を廃棄し、「基礎教育」は「基礎知識を自ら学び、習得・維持することを目的に個人が行う学習」と位置付け、これを土台に「実務教育」を行う2階建て方式に見直されます。


制度見直しの背景

認定制度を見直す背景にあるのが、ビジネス環境の急激な変化です。新薬開発が専門性の高い領域にシフトし、情報提供がデジタル化するなか、MRの立ち位置や存在意義も変わってきています。環境変化を踏まえ、医療関係者の期待に応えるものにするために改正が行われることになっています。

教育研修体系の見直しとして、現行の要綱(第2章の「教育研修」)に定められている企業主導のMR教育を個人の自律的な学習に置き換えることにより、MRの資質向上を図ろうとしています。

改正案では、第3章「生涯教育」が新設され、「医療関係者から信頼されるパートナーになることを目的にMRが主体的に実施する」と明記されています。個人学習ということにおいて、MRのあり方も大きく変わるでしょう。


2026年度以降の「MR基礎教育修了試験」実施地域・時期

2026年度からは、年2回(6~7月と11月)、それぞれ9日間、全国280ヶ所のテストセンターにてCBT(Computer Based Testing)方式で実施される予定です。受験要領は2025年12月に公表される予定なので、受験を予定している方はしっかり確認しましょう。


2026年度以降の「MR基礎教育修了試験」受験資格

新制度では、受験資格の制限が完全に撤廃される予定です。薬科大学の学生以外にも、生命科学系などの理系学生やその他のMR職を希望する一般人にも受験機会を拡大される予定です。これにより、学生の場合は卒業までに基礎教育修了認定の合格証を取得できるようになります。

なお、認定証の交付条件は、「基礎試験の合格」と「実務教育の修了」の2点となります。


2026年度以降の「MR基礎教育修了試験」試験科目

試験範囲は、「医薬品情報」、「疾病と治療」、「医薬品産業と倫理・法規・制度」の3科目です。

合格すると、次のステップとして所属企業で「実務教育」を受講し、企業による成果確認の上で、MR認定センターが実施する「MR実務教育修了ドリル」を修了した者にMR認定証が交付されます。

現在認定証の交付要件となっている「MR経験6ヶ月」は、廃止される予定です。


2026年度以降のMR認定証の更新

新制度では、所定の個人学習(基礎教育)を毎年行うことで、5年ごとに認定証を更新することができます。

基礎教育は「基礎知識を自ら学び、習得・維持することを目的とした個人が行う学習」と位置付けられ、MRとして働いていなくても意志さえあれば保持し続けることができます。

なお、企業に所属している人も含めて学習や更新の届け出は、個人で管理することを原則としています。



医薬品業界についてもっと知りたい方は「インターフェックスWeek」への来場がおすすめ

「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される展示会です。RX Japanが主催しており、MR業務のデジタル化・効率化を支援するサービスなどが出展する「ファーマDX EXPO」も開催されます。

製品・サービスの展示に加え、関連テーマのセミナーも多数併催されるため、医薬品業界の現状や今後の展望などについて詳しく知りたい方にもおすすめです。

業界の専門家や様々な企業が集まり、商談に繋がる場合もあります。製品・サービスの比較検討で来場される専門家も多いため、関連製品・サービスを提供している企業様は、ぜひ出展もご検討してみてはいかがでしょうか。

「インターフェックスWeek」の詳細は、以下のリンクよりご確認ください。

■インターフェックスWeek大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)インテックス大阪

■インターフェックスWeek東京
2025年7月9日(水)~11日(金)東京ビッグサイト



MRは医薬品情報の提供を通じて患者の治療に貢献している

MRは病院や薬局などの医療機関を訪問し、医師や薬剤師などの医療従事者に対して、医薬品の有効性や副作用、使用上の注意といった情報を説明することが主な業務です。患者さんと直接関わることはありませんが、医薬品情報の提供を通じて医薬品の適正使用に貢献しており、医療の一端を担う職業といえます。

RX Japan主催の「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される日本最大級の展示会であり、様々な分野の専門家や企業担当者と情報共有や技術的な質疑応答を行うこともできます。医薬品業界についての知見を深めたい方や、関連製品・サービスを提供している企業の担当者は、ぜひインターフェックスWeekへの来場・出展をご検討ください。

■インターフェックスWeek大阪
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■インターフェックスWeek東京
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▶監修:橋本 光紀

医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役。

九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研へ海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。


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