プロセスバリデーションとは?実施する理由やベリフィケーションとの違いなどを解説

医薬品製造・販売に関わる方であれば、1度は「プロセスバリデーション」という単語を見聞きした経験があるでしょう。

本記事では、医薬品を製造する上で理解しなければならない「プロセスバリデーション」の意味や、ベリフィケーションとの違いを詳しく解説します。

バリデーション全体におけるプロセスバリデーションの位置付けや、プロセスバリデーションの種類、実施する際のポイント、手順書に記載する内容、実施が困難な場合の対処法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。




バリデーションとは

「プロセスバリデーション」の定義の前に、まずは「バリデーション」を説明します。バリデーション(validation)とは、「確認」「批准」「妥当性の検証」「ある基準に合致するかどうかの検査」などの意味で用いられる英単語です。

医薬品製造分野では、GMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)第2条第13項により、「製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすること」と定義されます。

医薬品を製造する場合、「目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造可能」と証明するためにバリデーションを実施しなければなりません。

GMPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:GMPとは?目的・種類や運用方法までわかりやすく解説



プロセスバリデーションとは

プロセスバリデーションとは、GMP省令の取り扱いについての通知により、「工業化研究の結果や類似製品に対する過去の製造実績等に基づき、あらかじめ特定した製品品質に影響を及ぼす変動要因(原料及び資材の物性、操作条件等)を考慮した上で設定した許容条件の下で稼動する工程が、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造するために妥当であることを確認し、文書化すること」と定義されます。


プロセスバリデーションの対象

プロセスバリデーションの検証対象は、「プロセス(工程)」自体です。製造するための装置などを実際に稼働させて医薬品を生産し、製品の品質を分析して、プロセスの適格性を確認します。

製造装置に投入する「原材料(インプット)」や、生産された「製品(アウトプット)」はプロセスバリデーションの検証対象ではありません。


プロセスバリデーションが導入された背景

プロセスバリデーションは、あるプロセスが恒常的に安定した品質を提供可能かどうか、「科学的根拠」に基づいて検証するために必要です。アメリカ食品医薬品局(FDA)などが提唱し、国際的に実施を求める機運が高まりました。

日本でも「グローバルスタンダードへの準拠」や「品質保証の充実」などの観点から、各種法令(GMP省令など)によって規定されます。


プロセスバリデーションとベリフィケーションの違い

「プロセスバリデーション」と似ている手続きに「ベリフィケーション」がありますが、両者は実施のタイミングが異なります。ベリフィケーション(verification)とは、「生産後」のデータを集積・解析し、そのプロセスに適格性があることを確認する作業です。

プロセスバリデーションの場合、原則として「商業生産開始前」に検証作業を実施しなければならない点にご留意ください。なお、プロセスバリデーションの実施が困難な工程の場合は、プロセスバリデーションを省略し、ベリフィケーションのみを実施するケースも存在します。



バリデーション全体におけるプロセスバリデーションの位置付け

バリデーションとは、「設備やシステムが、期待される結果を与えるかどうかを検証・確認し、文書化する作業」であり、以下に示す5つのステップで進行します。

プロセスバリデーションが実施されるタイミングは、バリデーションの最終段階です。

なお、上記以外にも、洗浄方法が有効であることを確認・文書化する「洗浄バリデーション」やバリデートされた状態が維持されていることを確認するための「再バリデーション」、原料や資材、構造設備、工程、洗浄方法が変更された場合に行う「変更時のバリデーション」も存在するので、必要に実応じて適切なバリデーションを実施しなくてはいけません。



プロセスバリデーションの種類

プロセスバリデーションの種類には以下の2つがあります。

  • 予測的バリデーション(商業生産の開始前に実施)
  • コンカレントバリデーション(通常の生産にあわせて実施)

それぞれを説明します。


予測的バリデーション

予測的バリデーションとは、商業生産(製品の通常生産)を開始する前に実施するプロセスバリデーションです。

規格内の原材料を投入し、設計したプロセスによって一定のアウトプットを得られるかどうか(再現性が良く、恒常的に製品全体が目的とする品質を実現できたかどうか)を確認・検証します。


コンカレントバリデーション

コンカレントバリデーションとは、製品の通常生産にあわせて実施するプロセスバリデーションです。

原則として商業生産の開始前に予測的バリデーションを実施し、「限られたロット数のみを製造する場合」「当該製品を稀にしか製造しない場合」「バリデーション済みの工程を改良して製造する場合」にのみコンカレントバリデーションを実施します。



プロセスバリデーションを実施する際のポイント

プロセスバリデーションは、以下に示す5つのポイントを踏まえて実施しましょう。

  • 責任者の立ち会いの上で、手順書に基づいて実施する
  • 設備やシステムの適格性評価が完了したかどうかを確認する
  • プロセスバリデーションの評価に用いる試験方法の妥当性を検討する
  • 実生産規模で3ロットの繰り返しか同等以上の手法とする
  • 製品出荷の可否を決める前に完了させる

責任者の立ち会いの上で、手順書に基づいて実施する

まず、プロセスバリデーションを実施するための「手順書」を作成する必要があります。品質特性や工業化研究、類似製品に対する過去の製造実績などからリスクを考慮し、実施対象の設備・システムを特定しましょう。なお、実施するタイミングや責任者に関する事項も盛り込んでください。

作成後は、責任者が立ち会った上で、手順書に基づいてプロセスバリデーションを実施しましょう。


設備やシステムの適格性評価が完了したかどうかを確認する

前述のとおり、プロセスバリデーションはバリデーション全体の最終段階で実施する作業です。

適切な評価をするために、プロセスバリデーションの実施前に設備やシステムの適格性評価(設計時適格性評価、据付時適格性評価、運転時適格性評価、性能適格性評価)が全て完了したことを確認しましょう。


プロセスバリデーションの評価に用いる試験方法の妥当性を検討する

評価に用いる試験方法が「目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造可能」と判断する上で有効かどうかも検討する必要があります。客観的に評価可能な「数値」などとして示せる試験方法とし、検体を採取するタイミングや採取する場所・部位も適切に設定しなければなりません。

なお、「バッチ式プロセス」なのか「連続式プロセス」なのかによって、適切な方法が異なるのでご注意ください。

バッチ式プロセスの場合は、工程を終了させたタイミングで検体を採取します。採取する場所・部位は、工業化研究や設備適格性評価、当該機器に関する過去の事例などに基づいて設定しましょう。

連続式プロセスの場合は、工程を稼働させながら、工程全体を反映可能なタイミングで検体を採取します(「所定の時間ごと」「初期・中期・後期」など)。採取する場所は、設備機器の製品の排出口(あるいは、排出口に近い製造ラインで検体採取が可能な部位)に設定してください。


実生産規模で3ロットの繰り返しか同等以上の手法とする

実生産規模で、3ロットの生産を繰り返すか、同等以上の手法にしましょう。原則として、3ロット全部が合格範囲に入らなければなりません。1ロットでも不合格になった場合は、再度3ロット分の試験を実施してください。

ただし、不合格になった1ロットの原因が、明らかに操作ミス・機器故障である場合は、1ロット分だけを追加試験対象にしても良いとされています。


製品出荷の可否を決める前に完了させる

通常(予測的バリデーションの場合)は、製品出荷の可否を決める前(実生産を開始する前)にプロセスバリデーションを完了させなければなりません。

コンカレントバリデーションの場合は、製品の通常生産にあわせて実施してください。



プロセスバリデーションの手順書に記載する内容

プロセスバリデーションの手順書に盛り込む項目には、主に次のものがあります。

  • 目的と適用(目的、適用範囲、適用除外、引用規格)
  • 用語の定義
  • 対象の工程
  • バリデーションの手順(計画、実施、結果に基づく措置、結果の報告など)
  • 改訂履歴

詳細は、各自治体のサイト上から閲覧・ダウンロード可能な「手順書モデル集」などを参考にしてください。不明な点がある場合は、都道府県の担当部署や厚生労働省などに質問・相談しましょう。



プロセスバリデーションの実施が困難な場合の対処法

以下に示す理由で、社内スタッフだけではプロセスバリデーションの実施が困難な場合もあるでしょう。

  • プロセスバリデーションの作業を実施するための人手が足りない
  • プロセスバリデーションに関する専門知識や技術が不足している

人手不足の場合は、バリデーションの実務経験がある人材を雇い入れることで解決する場合もあります。しかし、技術不足や知識不足が原因の場合は、社内教育や学習にコストや時間がかかります。

どうしても実施が困難な場合は、解決策として「バリデーション業務の外部委託」をご検討ください。外部委託をする場合、バリデーション作業に客観性があり、かつ技量のある資格者により作業が行われるため妥当性も担保されます。

 



プロセスバリデーションの関連技術・情報を探すならインターフェックスWeekへ!

「インターフェックス Week」とは、医薬品・化粧品向けの技術・ソリューションが一堂に出展する展示会です。

様々な企業のソリューションが展示されるので、プロセスバリデーションの外部委託を検討中であれば、ぜひ「インターフェックス Week」にご来場の上、自社に適した支援サービスをお探しください。バリデーションに関する講演・セミナーも実施されるので、知見を深めるために来場してはいかがでしょうか。



製品の品質を保証するために、プロセスバリデーションの実施を!

医薬品を商業生産する場合は、プロセスバリデーションを実施しなければなりません。GMP省令などに基づいて適切に対応し、製品の品質を保証しましょう。

なお、社内にプロセスバリデーションに対応可能な人材がいない場合は、専門業者に委託する方法もあります。委託先をお探しの方や、支援サービスの提供・販売先をお探しの方は、RX Japan株式会社が主催する展示会「インターフェックス Week」への来場・出展をご検討ください。

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▶監修:廣瀬安國(ひろせ やすくに)

薬剤師、研修認定薬剤師。
2014年に薬剤師国家試験に合格後、調剤薬局へ就職。管理薬剤師を4年近く経験。調剤薬局に従事しながら、2018年から医療ライターとしても活動開始。医薬品やサプリメント、医療について、論文や公的機関が発表している情報をもとに記事執筆をしている。正確な情報を知識のない方にもわかりやすく説明することを心がけている。


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