医薬品製造業とは?事業内容・許可区分・手続きの流れを徹底解説!
医薬品の製造は法律で厳しく規制されおり、誰でも遂行可能な事業ではありません。医薬品製造業を営む場合は事前に「医薬品製造業許可」を取得する必要がありますが、許可区分や必要な手続きなどに関して、正確に把握できていない方もいるでしょう。
本記事では、医薬品製造事業への進出を検討中の事業者に向けて、許可区分や要件などを詳しく解説します。申請手続きの流れや注意するべき点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
医薬品製造業とは?
まず、「医薬品製造業」に関して説明する前に、「医薬品」の法的な定義をご紹介します。以下に、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第2条第1項第一号・第二号・第三号で示されている「医薬品」の定義をまとめました。
医薬品製造業とは、上記の「医薬品」に該当する製品を製造する事業です。「製造」には、包装・表示・保管行為(海外から輸入した医薬品の保管や、日本語表記のラベルを貼り付ける作業など)も含まれます。
医薬品製造業を営むには、事前に「医薬品製造業許可」「医薬品製造販売業許可」の取得が必須です。
製造販売業とは、製造・輸入した医薬品を販売する事業で、市場にある製品に関して最終的な責任を負う役割を担います(出荷した医薬品に「何らかの問題がある」と判断された場合は、回収を実施)。
医薬品製造業の許可だけでは国内市場への出荷はできず、医薬品製造販売業の許可だけでは医薬品を製造できないので注意しましょう。製造・出荷をするには、医薬品製造業と医薬品製造販売業の両方の許可を取得しなければなりません。
また、医薬品などの製造販売を行う業者で業者コードが付与されていない場合、「医薬品製造販売業許可」の申請前に「業者コード登録票」を提出する必要もあるので注意しましょう。
医薬品製造業の許可区分
医薬品を製造する場合は、品目に応じた区分の許可を取得しなければなりません。医薬品製造業の許可区分は5つあります。
- 医薬品製造業(生物学的製剤等)
- 医薬品製造業(放射性医薬品)
- 医薬品製造業(無菌医薬品)
- 医薬品製造業(一般)
- 医薬品製造業(包装・表示・保管)
各区分に関して以下で詳しく説明します。
なお、医薬品製造業の許可を申請する際には、許可権者である地方厚生局長または都道府県知事に申請する必要があります。許可区分に関して不明な点がある場合は、都道府県や厚生労働省のホームページを確認してください。
医薬品製造業(生物学的製剤等)
「医薬品製造業(生物学的製剤等)」とは、「生物学的製剤(化学的に合成された物質ではなく、生物が産生するタンパク質などを利用する医薬品)」や「遺伝子組換え技術を応用して製造される医薬品や、製造管理・品質管理に特別の注意を要する医薬品であって、厚生労働大臣が指定した製品」などを製造する工程の全部または一部を担う事業に関する許可区分です。
なお、生物学的製剤の代表例に、「ワクチン」や「血液製剤(アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤など)」「抗毒素」が挙げられます。
医薬品製造業(放射性医薬品)
「医薬品製造業(放射性医薬品)」とは、放射性医薬品(「医薬品製造業(生物学的製剤等)」の区分で製造が許可される医薬品を除く)を製造する工程の全部または一部を担う事業に関する許可区分です。
放射性医薬品とは、微量のガンマ線を放出するラジオアイソトープ(放射性同位元素)を含む薬で、治療用、診断用、体外診断用の3種類があります。検査や治療の際に「カプセルを飲む」「静脈に注射する」「ガスを吸入する」などの方法で使用されます。
医薬品製造業(無菌医薬品)
「医薬品製造業(無菌医薬品)」とは、無菌医薬品(「医薬品製造業(生物学的製剤等)」「医薬品製造業(放射性医薬品)」の区分で製造が許可される医薬品を除く)を製造する工程の全部または一部を担う事業に関する許可区分です。
なお、「包装・表示・保管」のみを担う事業は、後述する「医薬品製造業(包装・表示・保管)」に該当し、本区分には含まれません。
医薬品製造業(一般)
「医薬品製造業(一般)」とは、「医薬品製造業(生物学的製剤等)」「医薬品製造業(放射性医薬品)」「医薬品製造業(無菌医薬品)」の区分で製造が許可される医薬品以外の医薬品を製造する工程の全部または一部を担う事業に関する許可区分です。
本区分には、「包装・表示・保管」のみを担う事業は含まれません。
医薬品製造業(包装・表示・保管)
「医薬品製造業(包装・表示・保管)」とは、「医薬品製造業(無菌医薬品)」「医薬品製造業(一般)」の区分で製造が許可される医薬品の「包装・表示・保管」のみを担う事業に関する許可区分です。
医薬品製造業許可の要件
医薬品製造業許可を受けるためには、以下に示す要件を満たさなければなりません。
- 製造所の構造設備に求められる要件
- 申請者に求められる要件
- 製造管理者の設置
- GMP省令への適合
上記4要件の詳細を順番に説明します。
製造所の構造設備に求められる要件
製造所の構造設備は、「薬局等構造設備規則」に適合しなければなりません。以下は、薬局等構造設備規則第6条で示されている「医薬品製造業(一般)」の製造所に対する構造設備基準の例です。
- 製品・原料・資材の混同・汚染を防止し、円滑かつ適切な作業を実施する上で支障がない状態に配置され、清掃・保守が容易である
- 手洗設備・トイレ・更衣室を有する
- 製造作業を行う場所の照明・換気が適切である
- 製造作業を行う場所が清潔である
- 製造作業を行う場所が不潔な場所から明確に区別されている
- 不潔な場所が常時居住する場所から区別されている
上記以外にも、様々な基準を満たす必要があります。政府が運営する法令データ提供サイト「e-Gov法令検索」などで閲覧可能なので、詳細は「薬局等構造設備規則」の原文でご確認ください。
申請者に求められる要件
医薬品製造業許可は、誰でも申請可能なわけではありません。「欠格条項」に該当しない者のみが申請可能です。なお、法人に関しては、薬事に関する業務に責任を有する役員が欠格事由に該当する場合は申請できません。
以下に、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第5条第三号で定められている欠格事由を示します。
- 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第 75 条第 1 項の規定により許可を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
- 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第 75 条の 2 第 1 項の規定により登録を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、執行を終わり(または、執行を受けることがなくなった後)、3年を経過していない者
- 薬事に関する法令や処分に違反し、違反行為があった日から2年を経過していない者
- 麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者
- 心身の障害により医薬品の業務を適正に遂行できない者として厚生労働省令で定めるもの
- 医薬品の業務を適切に行う知識・経験を有すると認められない者
詳細に関して知りたい場合は、法令の原文をご覧ください。
製造管理者の設置
製造所には、「製造管理者」を設置しなければなりません。製造管理者の資格要件は原則として「薬剤師」とされていますが、製品の保管のみを主な業務とする製造所の場合、「薬学または化学に関する専門の課程を修了した」「一定期間、業務に従事した経験がある」などの条件を満たせば、薬剤師資格を保有していなくても製造管理者として就業可能です。
詳細は、法令の原文でご確認ください。不明な点がある場合は、厚生労働省のホームページを確認しましょう。
GMP省令への適合
医薬品製造業許可を受けるためには、GMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)への適合も求められます(「実効性のある医薬品品質システムを構築する」「製造部門から独立した品質部門を設置する」「製造所ごとに手順書を作成し、備え置く」など)。
なお、適合を求められるのは、省令が適用される医薬品を製造する場合であり、治験薬・動物用医薬品・体外診断用医薬品などに関しては適用対象外です。
GMPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
医薬品製造業許可申請の流れ
以下は、許可申請の大まかな流れです。
- 事前に都道府県の担当部署に相談する
- 製造業の管理運用に必要となる手順書などを提出する
- 業者コードの登録を申請する
- 医薬品製造業許可を申請する
- 製造所の「立入調査」が実施される
- 照会事項への回答を完了すると、医薬品製造業許可を取得可能
事前相談では、製造所の図面や手順書、製造する予定の品目を示すと、スムーズに相談が進みます。手順書を提出すると、担当部署による審査が実施されます。なお、手順書の作成および審査は、GMP省令が適用される医薬品の製造許可を取得する場合のみ必要とされます。
GMP省令が適用されない医薬品の製造許可申請をする場合は、「3.業者コードの登録を申請する」から手続きをはじめましょう。
医薬品製造業の許可申請時には、製造業許可申請書や製造品目一覧表、登記事項証明書、各種図面などを提出します。
医薬品製造業許可申請手続きの注意点
医薬品製造業許可の申請手続きを実施する際には、以下に示す点に注意が必要です。
- 必要な書類は申請内容によって異なる
- 販売事業を営む場合は「医薬品製造販売業」の許可が必要
各注意点に関して、順番に説明します。
必要な書類は申請内容によって異なる
必要な書類は、申請内容によって異なるのでご注意ください。例えば、「医薬品製造業(無菌医薬品)」に関しては、他社に試験検査を依頼する場合は「試験検査機関の利用に関する事項を記載した書面」が必要です。
法人が申請する場合は、「登記事項証明書」や「責任役員の権限および分掌する業務を明らかにする書類」の提出も求められます。詳細は、申請先の都道府県の公式サイトでご確認ください。
販売事業を営む場合は「医薬品製造販売業」の許可が必要
「医薬品製造業許可」を取得しただけでは、医薬品の販売に関する事業は営めません。医薬品の製造だけではなく販売事業も展開したいのであれば、取り扱う品目に応じた種類の「医薬品製造販売業許可」も取得しましょう。
なお、処方箋医薬品を販売する場合は「第1種医薬品製造販売業許可」を、処方箋医薬品以外の医薬品を販売する場合は「第2種医薬品製造販売業許可」の取得が必要です。
GMP省令が適用される医薬品の製造許可申請には、より厳格な品質管理基準が求められます。これには、製造プロセスの管理や設備の適正性、従業員の教育訓練などが含まれます。詳細は、厚生労働省の公式ガイドラインで確認しましょう。
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医薬品の製造事業を営むためには、許可を取得しなければならない
医薬品の製造事業を開始する際には、各種法令を正しく理解した上で、事前に医薬品製造業許可を取得しなければなりません。なお、製造する医薬品の種類によって、許可区分が異なるのでご注意ください。また、販売事業も営む場合は、別途、医薬品製造販売業許可を取得する必要があります。
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▶監修:前田修
薬剤師。
大学院修士課程を分子薬理学専攻で修了後、製薬会社の研究所でドラッグデザインを含む新薬探索研究に従事。その後、国立国際医療センター研究所(当時の名称)で外部研究員として、さらに臨床開発業務を経て新規薬剤の創薬に携わる。開発業務受託機関で、他科診療領域の新薬製造販売承認取得を支援。その後、調剤薬局株式会社で代表取締役に就任。現在は、複数の医療関係記事を執筆中。
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