医薬品物流とは?必要な許可や求められるポイント、GDPガイドラインの概要を解説

医薬品物流では、医薬品の出荷や保管、医療機関や卸業者への輸送など、様々な業務を取り扱います。医薬品の品質を保持するためには、物流過程での高度な温度管理や追跡管理が欠かせません。

本記事では、医薬品物流の基本的な知識や物流過程で求められるポイント、医薬品の取扱を規定したGDPガイドラインの概要を解説します。医薬品物流業で必要な許可やアウトソースするメリットも紹介しているので、ぜひご一読ください。




医薬品物流とは

はじめに、医薬品物流を理解する上で欠かせない基本知識を紹介します。まずは医療体制のなかの医薬品物流の役割や業務の内容を簡単に説明した後、医薬品物流で取り扱われる3つの分類を解説します。


医薬品物流の概要

医薬品物流とは、名称のとおり医薬品を取り扱う物流業務およびシステムです。具体的には、医薬品の保管・輸送・在庫管理など、原料の輸送から医療機関への配送までの一連の業務を担います。

医薬品は人の生命や健康に直接関わるものであり、厳格な管理が求められます。そのため、医薬品物流では適正な温度管理や湿度管理、品質管理が重要です。


医薬品物流の主な流通区分

医薬品物流は、大きく「生産物流」「メーカー物流」「卸物流」の3つに分けられます。各区分の流通ルート・主な業務内容・求められる管理の例は以下のとおりです。

生産物流では、原薬や原材料を製造工場へ届けるため、入庫前後の品質保持や保管条件の維持が重要です。メーカー物流では、製造した医薬品を卸業者の物流センターまで輸送し、保管施設でも薬機法をはじめとした法令に基づいた管理が求められます。

卸物流は、医療機関からの発注を受け、ピッキングや梱包、配送を行うラストワンマイルを担う区分です。製品ごとに定められた条件を維持しながら、確実かつ迅速な配送が必要です。


医薬品物流の3つの分類

医薬品物流で取り扱われる製品は、主に次の3つの分類に分けられます。

医薬品物流では、医療機関で医師が処方する医薬品の他、治療やリハビリに使用する医療機器や新薬の治験で使用される治験薬も取り扱います。対象の製品ごとに、輸送や保管で守らなければならない点や遵守すべきルールも異なるため、取扱う製品に応じた丁寧な対応が必要です。



医薬品物流に求められるポイント

医薬品物流と通常の物流では、輸送や保管で求められるポイントに違いがあります。医薬品物流に特徴的なポイントは次のとおりです。

  • 品質管理体制の整備
  • 法令やガイドラインの適用
  • セキュリティ対策
  • トレーサビリティの確保

各ポイントの詳細を解説します。


品質管理体制の整備

医薬品物流では、厳密な品質管理体制の整備が必要です。特に温度管理は重要なポイントで、輸送中や保管中に温度環境が変化してしまうと、医薬品の品質が損なわれる原因となり得ます。

適切な温度帯は医薬品の種類や承認内容、添付文書、製品ごとの保管条件によって異なります。常温、冷所、冷蔵、冷凍など、製品ごとに定められた条件を維持することが重要です。

近年製造が増加している抗体医薬品の原料は-20℃~-70℃の温度帯、血液製剤は-20℃以下の温度帯での管理が必要です。

温度帯が多岐にわたる医薬品を安全に届けるためには、製造から納品までの全工程で低温管理を維持する「コールドチェーン(低温物流)」の整備が重要です。

温度の逸脱が発生した場合、医薬品の品質へ影響を及ぼす可能性があり、場合によっては使用不可や廃棄につながるリスクもあるため、倉庫保管時から輸送時までの全工程で、温度のモニタリングと記録を継続的に行う体制が求められます。


法令やガイドラインの適用

医薬品物流で取り扱われる製品は、法令やガイドラインで取扱や管理方法が定められています。具体的には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)や「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」(GDPガイドライン)などです。

例えばGDPガイドラインでは、品質マネジメントや職員、施設、機器などを章ごとに分け、それぞれが遵守すべき基準を示しています。GDPガイドラインに関しては後述の「GDPガイドラインとは?」で概要を紹介しているので、あわせてご覧ください。


セキュリティ対策

医薬品物流では、保管時や輸送時のセキュリティ対策も重要です。医薬品が部外者に不正に利用されないよう、医薬品の貯蔵設備は他の区域との明確な区別が求められます。

例えば、保管倉庫にID認証管理システムを導入する方法はセキュリティ対策の一例です。保管倉庫に限られた人員だけが入室できる環境を整えることにより、医薬品の盗難被害や第三者による不正加工を防ぎやすくなります。


トレーサビリティの確保

トレーサビリティ(Traceability)は和訳すると「追跡可能性」です。医薬品を適切に管理する場合、メーカーから医療機関、そして患者まで、医薬品がいつどこで、だれがどのように管理・輸送したのかを把握することはとても大切です。

近年、医薬品のトレーサビリティは、輸出入の増加に伴い重要性が増しています。2019年12月の改正薬機法の公布を受け、2022年12月以降、対象となる医療用医薬品や医療機器などについては、トレーサビリティ強化を目的としたバーコード表示制度の運用が進められています。



GDPガイドラインとは?

GDPガイドライン(医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン)とは、医薬品の流通プロセスで品質や完全性が保証されることを目的として定められたガイドラインです。

GDPガイドラインが制定された理由には、近年、医薬品の流通は製造販売業者や卸販売業者など多くの人が関わるようになってきた状況が挙げられます。

GDPガイドラインは、市場出荷後の医薬品について、薬局、医薬品販売業者、医療機関に渡るまでの仕入れ・保管・供給業務などを対象としています。



医薬品物流業に関連する主な許可・登録

薬機法の対象となる医薬品や医療機器の保管、包装、表示の業務を受託する場合、取り扱う製品や業務内容に応じて、製造業許可や製造業登録などが必要になる場合があります。医薬品物流業に関する主な許可・登録は次のとおりです。

  • 医薬品製造業
  • 医薬部外品製造業
  • 医療機器製造業
  • 化粧品製造業

各許可・登録の特徴を紹介します。


「医薬品製造業」

医薬品製造業の許可は、医薬品の製造工程を行うために必要な許可です。一般、無菌医薬品、包装・表示・保管、生物学的製剤等、放射性医薬品の区分があります。

医薬品物流業者で医薬品の包装や表示、保管業務を受託する場合、「医薬品製造業(包装・表示・保管)」区分の許可を取得します。「医薬品製造業(包装・表示・保管)」区分の許可権者は都道府県知事のため、取得する際は管轄の自治体の窓口で相談しましょう。

なお、医薬品製造業についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:医薬品製造業とは?業務の内容や区分、許可申請に必要な要件などを解説!


「医薬部外品製造業」

医薬部外品製造業の許可は、医薬部外品の製造・販売・輸入などに必要な許可です。

一般、無菌医薬部外品、包装・表示・保管の区分が設けられているので、該当する区分の取得が必要です。医薬部外品製造業の許可権者は都道府県知事であるため、取得の際は管轄の自治体に申請します。


「医療機器製造業」

医療機器製造業は、医療機器の製造工程を行う製造所ごとに登録が必要です。医療機器の製造販売を行う場合は、別途、医療機器製造販売業許可などが必要になる場合があります。

医療機器は高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器の分類の他、リスクの高さによる分類とは別に、 特定保守管理医療機器の指定があります。医療機器製造業の登録は、管轄の自治体で行います。


「化粧品製造業」

化粧品製造業の許可は、化粧品の製造工程を行うために必要な許可です。

一般、包装・表示・保管の区分が設けられており、化粧品に取扱説明書を同梱する業務や化粧品を保管する業務などを受託する際には化粧品製造業(包装・表示・保管)の許可取得が必要です。化粧品製造業の許可権者は都道府県知事で、許可の取得は医療機器などと同様に管轄の自治体で行います。



医薬品物流が抱える課題

医薬品物流は、以下の課題を抱えています。

  • 2024年問題によるドライバー不足
  • 物流コストの上昇
  • 輸送業務の品質低下

2024年4月より、トラックドライバーへの時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されました。1日に運行できるトラック便数や長距離輸送の対応力が低下し、配送遅延や納品タイミングの柔軟性低下が懸念されています。

また、ドライバー不足に伴う賃金の上昇や燃料費の高騰が重なり、物流全体のコストが上昇しています。コスト増は最終的に医薬品の製造・販売コストにも波及する可能性があり、業界全体での対応が必要です。

さらに、医薬品物流ではGDPガイドラインの対応をはじめ高い専門性が必要とされる一方、物流業界全体の人材不足が深刻化しており、輸送業務の品質低下につながる可能性があります。



医薬品物流をアウトソースするメリット

製薬会社や医療機器メーカーが、医薬品の物流業務を自社で行うのは大きな負担です。以下では、医薬品物流業務をアウトソースするメリットを紹介します。


業務の効率化

医薬品の物流業務は、医薬品の保管や輸送だけではありません。業者によっては、医薬品を外箱に梱包する作業やラベルを貼付する作業などに対応する場合もあります。

上記の物流業務をアウトソースすれば、業務の効率化が図れ、自社の貴重な経営資源を根幹業務へと集中できます。その他、マーケティングや医薬品の製品開発などに注力でき、売上向上につながる点もメリットです。


管理・運用コストの削減

医薬品物流の専門業者に業務を委託すると、物流の管理や運用にかかる事務処理コストを軽減できます。また、自社で倉庫を所有して医薬品を保管する方法と比べ、アウトソースにより保管にかかる費用の削減が見込める点もメリットでしょう。

さらに、物流業者の持つノウハウや専門知識を活用できる点も利点です。物流業者のなかには効率化手法を提案してくれるところもあり、配送回数の削減や効率的な医薬品管理により、業務量と費用両方のコスト削減が期待できます。


物流量増加への対応

近年、物流量の増加や物流人材の不足に伴い、各企業は物流リソースの確保に問題を抱えています。

自社で物流業務を行う場合、物流量が増加したくても人材やリソースを簡単に確保できません。専門の物流業者へアウトソースすれば、対応できるキャパシティの増加が見込めます。



医薬品物流をアウトソースする際に確認すべきポイント

物流業務のアウトソースで満足できる結果を得るためには、業者選びはとても重要です。すでに解説したとおり、医薬品物流は厳密な品質管理が求められるからです。以下では、医薬品物流をアウトソースする際に確認すべきポイントを紹介します。


GDPガイドラインを遵守しているか確認する

医薬品の輸送や保管では、GDPガイドラインに準拠した管理体制の整備が重要です。物流業者を選ぶ際には、GDPガイドラインに準拠した品質管理システムの構築、温度管理、バリデーション対応が整っているかなどを事前に確認しましょう。

また、温度モニタリングの方法や万が一温度逸脱した場合の対応も、あわせて確認しましょう。


サービス内容の充実度

物流業者選びでは、提供されるサービスの範囲と質も重要なチェックポイントです。医薬品の保管や卸業者への出荷、さらには医薬品の原材料の保管が可能か否かなど、気になる点は業者に問合せておきましょう。

委託したい業務の洗い出しと優先順位付けをしてから各業者のサービス内容を比較すると、よりニーズに合った委託先を選べます。


倉庫の所在地や配送エリア

物流業者の持つ倉庫や拠点、主な配送エリアは業者ごとに違います。全国に拠点を持つ業者もあれば、特定の地域に特化した業者もあります。自社の立地や製品の特性を考慮して、最適な拠点や配送エリアを提供する業者を選びましょう。


BCP対応の建物かどうか

BCP(Business Continuity Plan)は、緊急事態においても事業を継続し、被害を最小限に抑えるための計画です。BCP対応の倉庫を持つ業者に委託することにより、地震や台風などの自然災害発生時でも、製品の安全性を守り、医薬品の供給を継続できます。



医薬品物流のDX・テクノロジーの活用

医薬品物流では、品質管理の高度化や業務効率化を目的として、デジタル技術の活用が進んでいます。

活用例のひとつが、リアルタイム温度監視システムです。物流センターでの保管から輸送中、支店到着後の保管に至るまで、各拠点の温度データを一元的に把握できる体制の整備が広がっています。

システムにより機能は異なりますが、設定した警報値を超えた際にはメールなどで即時に届くサービスもあり、温度逸脱への迅速な対応が可能です。GPSとの組み合わせにより、配送状況や輸送ルートのリアルタイムな確認も実現できます。

また、RFIDタグを活用したトレーサビリティ強化も注目されています。

RFIDタグを活用すると、入出荷時に医薬品を非接触・一括で読み取れるため、手作業で行っていた検品や記録の手間を大幅に削減可能です。ロットや有効期限の情報もリアルタイムで管理でき、トレーサビリティの向上や在庫の正確な把握に役立ちます。



医薬品物流の情報収集、関連サービスの比較検討ならインターフェックスWeekの活用を

医薬品物流の最新動向の把握、関連サービスの比較検討を行うなら、「インターフェックスWeek」をぜひご活用ください。インターフェックスWeekは医薬品や化粧品に特化した展示会で、原薬、分析機器、製造設備、包装関連、物流、受託サービス、DXソリューションなど様々な製品・技術が展示されます。

インターフェックスWeekには物流サービスの専門展示エリアがあるため、最新の輸送サービスや技術を比較検討する良い機会です。2023年に開催されたインターフェックスWeekでは、国際輸送のGDP対応や医薬品輸送用の保冷箱に関する技術などが出展されました。

医薬品物流の最新トレンドや技術動向を知れるため、これから医薬品物流業に参入する方にもおすすめです。

また、インターフェックスWeekには医薬品業界や化粧品メーカーのSCM部門や物流部門の方が来訪します。顧客となり得る方に対する自社製品の認知度向上に役立ち、出展にも大きなメリットがあります。

2026年度のインターフェックスWeekは、以下のスケジュールで開催されます。

詳細は、以下のリンクよりご確認ください。



医薬品物流をアウトソースして業務効率化を図ろう

医薬品物流は徹底した温度管理やGDPガイドラインの遵守など、多様な問題への対応が必要な業務です。近年では他業種と同様に物流業務をアウトソースする企業も増えており、外部への委託により、業務効率化や物流体制の強化につながる可能性があります。

インターフェックスWeekでは物流サービスの専門展示エリアがあり、医薬品物流の最新の動向に触れられます。関連業界に在籍する方のリードを獲得したい方にもおすすめです。医薬品物流の委託や受託を検討している方は、ぜひインターフェックスWeekをご活用ください。

西日本最大級!業界のトレンドがわかる3日間

医薬品・化粧品・再生医療に関する専門技術展
会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)  会場:インテックス大阪



▶監修:山本 佳奈(やまもと かな)

1989年生まれ。滋賀県出身。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)、ナビタスクリニックでの勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、日本貧血改善協会理事。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)。専門は内科、鉄欠乏・貧血、医療政策。


▼この記事をSNSでシェアする


■関連する記事