PIC/Sとは?目的や日本のGMP省令との違い、加盟のメリットを紹介!

PIC/Sは、国際的に調和されたGMP基準及び査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目的に活動する団体です。EU各国やアメリカ、日本など多くの国々の査察当局が加盟したこともあり、PIC/Sが開発・推進するGMPガイドラインは実質的な医薬品査察の世界基準と受け止められています。

本記事では、PIC/Sの概要や目的、PIC/S GMPガイドラインの特徴や構成を解説します。また、PIC/Sに加盟するメリットや近年の動向も紹介します。



PIC/Sとは?

PIC/Sは医薬品査察協定に関する国際的な組織です。以下では、PIC/Sの概要や目的を解説します。


PIC/Sの概要

PIC/Sは「Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme(医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム)」の略称です。医薬品分野における国際的調和されたGMP基準及び査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目的とした査察当局の非公式的な協力組織で、スイスのジュネーブに事務局を持ちます。

PIC(医薬品査察協定)自体は法的根拠のある正式な条約ですが、PIC/Sは公的機関が参加する枠組みであるものの、法的拘束力はもたない側面があります。

PIC/Sは2023年現在アメリカやEU、日本など56の査察当局が加盟しています。


PIC/Sの目的

PIC/Sの目的は、医薬品分野での国際的に調和されたGMP基準の推進と、査察業務のための品質システムの開発、実施、保守をリードすることです。GMPの世界調和やGMP査察官の育成、GMPに関する情報や経験の共有や査察当局間のネットワーク化の推進などを行っています。



PIC/S GMPガイドラインとは?

PIC/S GMPガイドラインは、GMPの国際的な調和を目的にPIC/Sで作成された共通基準です。以下で、PIC/S GMPガイドラインの特徴と日本のGMP省令との違いを解説します。


PIC/S GMPガイドラインの特徴

PIC/S GMPガイドラインは、PICが査察情報の共有化を目的としてヨーロッパで組織されたこともあり、EU-GMPをベースに「序論」「Part 1:製剤GMP(医薬品の基本要件)」「Part 2:原薬GMP(医薬品有効成分の基本要件)」「Annex(付属書)」から構成されています。

1980年代後半からは、PIC/S GMPガイドはEUのGMPガイドラインとして採用されました。その後、PIC/S GMPガイドとEUのGMPガイドラインは並行の関係(in parallel)で開発され、一方の条項に変更が加えられると、他方にも変更が加えられるかたちで今日に至っています。

PIC/S加盟国では、PIC/S GMPガイドラインに沿って、査察対策として自国のGMP省令を整備する傾向にあります。GMPガイドラインはICH(Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use医薬品規制調和国際会議) Q7(原薬GMPガイドライン)で国際的に調和され承認されており、各国規制当局はこのガイドラインに従って製造を行うこととなっています。

日本では医薬発第1200号として平成13年11月2日に発出されています。PIC/S GMPガイドラインは査察対策として有効活用されています。


日本のGMP省令との違い

PIC/S GMPガイドラインと日本のGMP省令の違いは、PIC/S GMPガイドラインは各国査察当局による非公式組織が策定する基準であるのに対し、日本のGMP省令は厚生労働省が制定した省令(「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」)である点です。

PIC/S GMPガイドラインに法的拘束力はありませんが、GMP省令は薬機法に基づいて発せられた命令であるため、法的拘束力を持ちます。

PIC/S GMPガイドラインと日本のGMP省令に含まれる項目は、「品質マネジメント(経営者の責任、品質の照査など)」を除けば大きな差はありません。細かな差異に関しては、GMP施行通知により対応しています。日本のGMPは、日本が1990年ICH創設時より加盟、又PIC/Sには2014年加盟したことにより、大幅に国際的に調和するためにICH Q7やPIC/S GMPガイドラインに対応した形に改定されています。

なお、GMPの詳細を知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

▶関連記事:GMPとは?目的・種類や運用方法までわかりやすく解説



PIC/S GMPガイドラインの構成

PIC/S GMPガイドラインは、次の4つのパートで構成されます。

  • 序論(Introduction)
  • Part I:製剤GMP(Basic Requirements for medical Products、医薬品の基本要件)
  • Part II:原薬GMP(Basic Requirements for Active Pharmaceutical Ingredients、医薬品有効成分の基本要件)
  • 追補(Annexes)

序論は、PIC/S GMPガイドラインの一般的な説明や歴史が記載されたパートです。Part Iでは品質マネジメントや職員など製剤に関する基準、Part IIには原薬に関する基準が記述されています。また、無菌医薬品の製造やヒト用生物学的製剤の製造など、20からなる追補パートも設けられています(Annex16とAnnex18は欠番)。



PIC/S加盟のメリット

企業が属する国や地域がPIC/Sへ加盟するとどのようなメリットがあるのでしょうか。加盟の主なメリットは次のとおりです。

  • 品質改善が進む
  • セミナーなどに参加できる
  • グローバルに展開しやすくなる
  • 査察対応が容易になる

各メリットの詳細を解説します。


品質改善が進む

新規申請者がPIC/Sへ加盟するためには加盟国メンバーの詳細な評価を受ける必要がありますが、既存のメンバーも継続的に再評価を受けます。加盟する全ての国や地域に、PIC/S GMPガイドラインに準拠した品質管理体制や検査システムの改善が必要だからです。規律の遵守により、品質改善が進む点は大きなメリットです。


セミナーなどに参加できる

PIC/Sでは、セミナーや専門家サークル、コーチ付き査察プログラムや品質リスクマネジメントの分野における教育訓練など、様々な学びの場を提供しています。その他、PIC/S共同訪問プログラムで他国のGMP運用を学ぶことができ、加盟国の査察力養成に貢献します。


グローバルに展開しやすくなる

PIC/S GMPガイドラインへの準拠は、各国の医薬品の国際的流通要件です。国内のメーカーもPIC/S GMPガイドラインと共にICH Q7への準拠した製造を行えば、市場を国内だけでなく海外に広げやすくなります。海外の販路を開拓したい場合には、ICHQ7やPIC/S GMPガイドラインに対応していなければなりません。


査察対策が容易になる

PIC/S GMPガイドラインは、査察対策としては極めて重要です。査察官はPIC/S GMPガイドラインを参考に査察を実施するので、ICH Q7と並行して準備をすればスムースな査察を受けられます。

特に、PIC/S GMPガイドラインには「サイトマスターファイル」という査察の際に製造業者が準備すべき一般情報の項目が詳細に記載されています。査察を受ける際は、これを参考に資料を揃えれば問題なく査察が進行することになり、製造業者にとってはありがたい項目です。査察を受けられる際は忘れず準備することをおすすめします。



各国のPIC/S加盟状況と国内の動向

PIC/Sの加盟国は2023年6月12日にブルガリア、2023年7月1日にサウジアラビアの各当局が加盟し、現在56査察当局です。

主要な参加機関には、アメリカの食品医薬品局(US FDA)やドイツの連邦保健省(BMG)、フランスの国立医薬品健康製品安全庁(ANSM)やイギリスの医薬品およびヘルスケア製品規制庁(MHRA)が挙げられます。

EUではPIC/Sは医薬品の製造や輸出入の要件となっており、さらに2011年にアメリカが加盟したことから、PIC/S GMPガイドラインは実質的な国際基準に位置付けられています。


PIC/Sに関する国内の動向

日本は2012年より加盟申請を行いました。それを受け、厚生労働省は2013年8月30日に「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱い」を示し、品質リスクマネジメントの活用や製品品質の照査などの部分を改定しました。そして、2014年7月1日にPIC/Sに加盟を承認されています。

また、2021年8月1日には「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正」を通知し、GMP省令の抜本的な改定を行いました。これらの改定により、厚生労働省はPIC/S GMPガイドラインと日本のGMP省令の間にある細かな差異を調和しています。



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▶監修:橋本光紀

医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役。
九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研に海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。




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