再生医療とは?メリット・デメリットや関係法令、抱える課題に関して詳しく解説!

再生医療は、従来の医薬品では治療できない疾患に対して有効な場合があり、これまでの治療法では救えなかった患者の救命につながるかもしれません。

また、昨今では再生医療等製品の開発・製造・販売の拡大を後押しする法律も整備されており、今後成長が期待される分野・領域です。製薬会社だけではなく異業種からも参入が相次いでいます。

本記事では、再生医療のメリットやデメリット、関係法令、再生医療が抱える課題について詳しく解説します。



再生医療とは

再生医療とは、患者本人(または、他人)の細胞・組織を加工(培養)した上で、障害を受けた部位の代わりに使用し、失われた組織・機能を再生・修復する医療技術です。

2024年4月時点で承認されている再生医療等製品は19種類あり、iPS細胞を使った再生医療の臨床研究も進められています。


再生医療の歴史

1970年代に分化細胞(表皮細胞・軟骨細胞など)を培養する技術が確立し、再生医療の歴史がスタートします。1987年には米国FDAが自家培養表皮を承認し、ヤケドなどの治療で使用が開始されました。

その後、1993年には「Tissue engineering」という概念(細胞・組織と生分解性高分子などとの組み合わせにより、移植可能な組織・臓器を形成する技術)が提唱されます。

1997年に米国FDAで自家培養軟骨が承認され、1998年にはヒトES細胞の樹立が発表されました。1999年に「ヒト骨髄間質細胞(間葉系幹細胞)の多様な細胞種への分化能」が報告されて以降は、各国で主に体性幹細胞を用いた臨床試験が実施されます。

日本では、2006年にマウスiPS細胞の樹立が報告され、翌年2007年に自家培養表皮が薬事承認、同年11月にはヒトiPS細胞の樹立が発表されました。

ES細胞についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:ES細胞とは?iPS細胞との違いや活用が期待される分野を解説!



現在実施されている再生医療の種類と適応症例

現在、健康保険が適用される診療で、「患者自身の組織に由来する皮膚・軟骨・筋など」を使用した再生医療が実施される場合があります。また、間葉系幹細胞(体性幹細胞の一種)を用いた治療法の開発も進行中です。

なお、美容医療をはじめとする自由診療でも再生医療が実施されていますが、厚生労働省の承認を受けず、医師の裁量で実施されるケースもあることにご留意ください。詳細は各クリニックの公式サイトで確認しましょう。

以下では、再生医療の種類とその適応症例をご紹介します。


皮膚の再生医療と適応症例

皮膚の再生医療の代表例としては、「自家培養表皮」を用いた治療が挙げられます。自家培養表皮とは、患者自身の皮膚を原材料として作製した表皮細胞シートで、わずか数平方センチメートルの皮膚から、体表全体を覆う面積の自家培養表皮を作成可能です。

ヤケドや各種皮膚疾患に適応があり、重症熱傷・先天性巨大色素性母斑・表皮水疱症(接合部型と栄養障害型)の治療で自家培養皮膚移植を実施する場合は、健康保険が適用されます。


軟骨の再生医療と適応症例

軟骨の再生医療の代表例としては、「自家培養軟骨」を用いた治療が挙げられます。自家培養軟骨とは、患者自身の軟骨を手術で少量採取し、ゲル状のアテロコラーゲンと混合して立体的な形状に成型してから培養した製品です。

膝関節の外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除外)に適応があり、健康保険が適用されます。

侵襲性が低い治療法(手術で採取した軟骨ではなく、骨髄穿刺によって採取した間葉系幹細胞を用いる治療法など)の開発も進行中なので、最新の動向をチェックしましょう。


心筋への骨格筋を用いた再生医療と適応症例

心筋の再生医療の代表例としては、患者自身の大腿部から採取した筋肉組織に含まれる「骨格筋芽細胞」を培養し、シート状に調製した製品を心臓表面に移植する治療法が挙げられます。

「ヒト(自己)骨格筋由来 細胞シート」は心不全患者の治療に使われ、2016年1月からは健康保険が適用されています。


間葉系幹細胞を使った再生医療と適応症例

間葉系幹細胞とは、骨・血管など、複数組織への分化能(多能性)を有する幹細胞です。体性幹細胞の一種であり、脂肪組織や骨髄液、歯髄、羊膜などから採取できます。なお、脂肪由来間葉系幹細胞は増殖能が高く、採取も比較的容易で安全です。

すでに「骨髄移植後の移植片対宿主病に対する治療」や「MSC(ステミラック注)を用いた脊髄損傷への臨床使用」の実績があり、今後は多種多様な組織・臓器の再生医療(腎疾患・肝硬変・神経変性疾患の治療、乳房再建など)で用いられることが期待されます。



再生医療の領域で使われる幹細胞の種類

再生医療に応用される(または、今後応用される可能性がある)主な幹細胞は、以下の3種類です。

  • 体性幹細胞
  • ES細胞
  • iPS細胞

それぞれの特徴を把握した上で、再生医療関連事業を営みましょう。


体性幹細胞

体性幹細胞とは、各組織に存在する幹細胞で、いわゆる「自然治癒力」の源です。原則として、多様な細胞に分化する能力は有しません。例えば、皮膚幹細胞であれば皮膚の細胞に、角膜幹細胞であれば角膜の細胞にのみ分化します。

ただし、上述した「間葉系幹細胞」は、例外的に多様な細胞(骨・軟骨・血管など)に分化可能です。


ES細胞

ES細胞とは、生殖医療などで生じる余剰胚(胚盤胞)から取り出した「内部細胞塊」を培養した幹細胞です。

適切な培養条件を与えてやれば無限に増殖可能であり、身体を作るあらゆる細胞へと分化する能力を持ち、例えば心筋・神経・網膜へ分化させることができます。


iPS細胞

iPS細胞とは、皮膚などの細胞に、「 ES細胞に特異的に発現している遺伝子」の一部を導入して樹立される幹細胞です。ES細胞と同様に、無限に増殖し、あらゆる細胞種に分化することができます。

ただし、遺伝子を導入した細胞の全てがiPS細胞になるわけではありません。一部の「形態的にES細胞と類似した細胞」が選別され、iPS細胞株として樹立されます。



再生医療のメリット・デメリット

再生医療を実施すれば、これまで救えなかった命を救える可能性があります。しかし、再生医療には、メリットだけではなく、デメリットもあります。

以下で詳しく説明します。


再生医療のメリット

近年、再生医療に関する研究・開発が進み、様々な疾患に対して有効な治療法が登場しました。従来の治療法では救えなかった患者も、今後は再生医療による救命が可能になるでしょう。また、日本の医療技術が向上し、国際競争力強化につながる点もメリットです。

日本では、2024年4月時点で19品目の再生医療等製品(定義は後述)が承認されています。研究の進展に伴って、さらに品目が増加するでしょう。


再生医療のデメリット

現状では、製品の多様な価値(特長)が価格として評価されていません。そのため、上市しても充分な収益を得られず、新たな投資が困難な場合があります。また、他家細胞(他人の細胞)の原材料の一部は輸入に依存しているため、地政学的リスクにも留意が必要です。

ES細胞に関しては、受精卵を破壊して樹立されるため、倫理的な課題が常に議論されます。

iPS細胞に関しては、遺伝子を導入する行為自体がリスクであり、がん化する可能性や、不完全な初期化によってエピジェネティクス異常が生じる可能性も指摘されています。



再生医療に関する法律

再生医療は、以下の法律によって規制を受けます。

  • 再生医療等安全性確保法
  • 医薬品医療機器等法

より詳しく知りたい方は、法律の原文や厚生労働省の公式サイトなども併せてご覧ください。


再生医療等安全性確保法

再生医療等安全性確保法とは、臨床研究や自由診療として「特定の患者」に再生医療を実施する医療機関に対する規制を目的とした法律です。リスクに応じた手続きが定められており、いずれの分類でも、医療機関が提供計画を作成しなければなりません。以下は、再生医療の法的な分類です。

また、細胞培養加工を「外部委託」する場合の基準も定められています。


医薬品医療機器等法

「不特定多数の患者」への使用を目的として、製薬会社などが製造・販売する細胞加工物は「再生医療等製品」と呼称され、医薬品医療機器等法の規制対象です。医薬品医療機器等法では、再生医療等製品の有効性・安全性を確保するために、製造所の基準などが定められています。

なお、再生医療等安全性確保法に基づいて医師の責任で実施される細胞の 培養・加工の委託に関しては、医薬品医療機器等法の適用外です。



再生医療の課題

現在の再生医療が抱える主な課題として以下の2点が挙げられます。課題を正確に把握した上で、再生医療関連事業を営みましょう。

  • 幹細胞から各種細胞に分化させる作業にはコストがかかる
  • 専門的な知識・スキルを有する人材の育成が必要

再生医療等製品の開発・製造にはコストがかかる

再生医療等製品の開発・製造には、既存医薬品よりも多くのコストがかる傾向にあります。

生産コストが高く、採算割れする場合があるため、「薬価算定制度の見直しが必要」と指摘されています。また、診療報酬も充分ではありません。医療機関側の持ち出しとなるケースがあり、「再生医療の妨げになる」との声もあります。


専門的な知識・スキルを有する人材の育成が必要

再生医療には、従来の医療とは異なる知識・スキルを有する人材の育成が欠かせません。

産・学・官で、広範な経験・高い視座を有する人材の交流促進や、人材流動性の向上を促す施策(「スタートアップへの人的伴走支援を実施する企業」に対するインセンティブ制度など)の実施が求められます。



再生医療EXPOで、再生医療の研究・製造に役立つ情報を収集しよう

RX Japanが主催する「再生医療EXPO」は、再生医療関連の研究支援サービスや製造技術が一堂に出展される展示会です。再生医療関連事業を営む企業に向けて、様々な技術・支援サービスが展示されるので、最新の情報を収集したい方におすすめです。

また、関連技術や支援サービスを開発・販売する企業は、来場者と交流することで販売先の開拓に役立ちます。自社技術を広めたいと考えている方は、ブースの出展もいかがでしょうか。

■再生医療EXPO東京
2024年6月26日(水)~28日(金)開催

■再生医療EXPO大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)開催



再生医療は今後大きな成長が期待される分野!

再生医療とは、患者本人(または、他人)の細胞・組織を加工(培養)した上で、障害を受けた部位に使用し、失われた組織・臓器を再生・修復する医療です。再生医療関連事業に参入を検討している場合は、現状の課題を把握した上で、各種法令に則って開発・製造する必要があります。

「再生医療EXPO」では、再生医療関連の技術や支援サービスが展示されます。再生医療関連事業に従事する方や関連技術や支援サービスを開発・提供する企業は、この機会をご活用ください。

■再生医療EXPO東京
 2024年6月26日(水)~28日(金)開催  
 詳細はこちら

■再生医療EXPO大阪
 2025年2月25日(火)~27日(木)開催
 詳細はこちら



▶監修:宮岡 佑一郎

公益財団法人東京都医学総合研究所再生医療プロジェクト プロジェクトリーダー
埼玉県出身。2004年、東京大学理学部生物化学科卒業。2006年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。2009年同大学院博士課程修了。博士(理学)。2009年4月、東京大学分子細胞生物学研究所助教。2011年7月、米国Gladstone研究所、UCSFポスドク。2016年1月より、公益財団法人東京都医学総合研究所、再生医療プロジェクト、プロジェクトリーダー(現職)。2019年、科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞。


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