モダリティとは?種類や創薬トレンド、注目の科学技術を解説!
医薬品の分野では、「モダリティ」という言葉を最近よく耳にする機会があります。創薬に関する技術の多様化や、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療方法がない疾患へのニーズ)に対応するためにも、新たなモダリティの獲得は創薬に関連する企業の課題です。
本記事では、モダリティとは何かを解説した後に、モダリティの種類(既存モダリティ・新規モダリティ)や近年のモダリティのトレンドを解説します。新規モダリティの課題や今後期待される創薬モダリティも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
モダリティとは
医薬品におけるモダリティ(modality)とは、創薬基盤技術の方法や手段、または各方法や手段に基づいて製造された医薬品の種別を示す用語です。
モダリティはもともと「様式」や「様相」をさす用語で、言語学では発話時の話し手の心的な態度を示す言葉として用いられてきました。医療の分野では、超音波やMRI、X線、CTなどの医療機器の種類を表す言葉として使用されてきた用語です。
近年、医薬品の分野では創薬基盤技術の進歩により、抗体医薬品や遺伝子治療薬、核酸医薬や細胞治療などの多彩な技術が開発されています。このように創薬手段が多様化したことを受け、基盤技術の手段や方法を分類する「モダリティ」が用いられるようになってきました。
モダリティの種類
医薬品におけるモダリティには、近年様々な種類が登場しています。各モダリティの分類に明確な定義があるわけではありません。以下では、一般的なモダリティの種類を、既存モダリティと新規モダリティに分けて特徴を紹介します。
既存モダリティは製薬企業でノウハウや技術が蓄積されている場合が多く、安全性や有効性が高い傾向があります。新規モダリティは新しい治療方法の確立をはじめとする大きなポテンシャルを有する一方で、安全性や有効性、経済性などでのさらなる研究・開発が求められています。
モダリティが多様化した背景
モダリティが多様化した背景には、ライフサイエンス関連分野での目覚ましい研究・開発の進展が挙げられます。
例えば、1980年代に遺伝子組み換え技術をはじめとするライフサイエンス研究が進んだことを受け、1990年代から抗体医薬品の研究・開発が進み、現在では複数の抗体医薬品が市場に提供されています。
また、2012年にCRISPR(クリスパー)と呼ばれるゲノム編集技術が登場して以降、世界中の研究室に導入され、ゲノム編集技術が飛躍的に向上しました※。ゲノム編集技術の向上は短期間かつ効率的なゲノム研究を可能にし、近年の細胞医薬や遺伝子治療の発展につながっています。
モダリティのトレンド
医薬品のモダリティのトレンドは、1900年代から2000年代までは低分子医薬品が主流でした。低分子医薬品は高い組織浸透性が期待でき、低コスト生産が可能な点から、20世紀には全盛期を迎えました。
一方、低分子医薬品は標的に対する特異性があまり高くなく、副作用が生じる点が課題です。2000年代に入ると、遺伝子組み換え技術に基づくタンパク質医薬が登場し、21世紀以降は抗体医薬品が飛躍的に成長しました。
近年では、核酸医薬や遺伝子治療、細胞医薬などの新規モダリティが次々と登場し、モダリティの多様化が進んでいます。
なお、2000年の日本のPMDA承認品目におけるモダリティ別占有率は、低分子医薬品が全体の80%※ほど占めていました。直近5年間の低分子医薬品のモダリティ別占有率は60%※ほどまで低下しており、抗体医薬品の増加が顕著です。
新規モダリティの課題
新規モダリティに属する治療は、重要疾患の治療や予防に期待が寄せられています。一方、いくつか課題もあります。主な課題には、次の項目が挙げられます。
- 低分子医薬品と比較してコストが高い
- 対象疾患の患者数が少ない
- 開発実績や経験が少ない
- 製造施設や設備機器が不足している
新規モダリティは、一般的に低分子医薬品と比較してコストが高い点が課題です。研究・開発の途上にあるモダリティが多く、初期投資と製造コストの両方で費用がかかります。遺伝子治療をはじめとする分野では対象疾患の患者数が少なく、臨床データの収集にハードルがある点も課題です。
また、すでに多数の承認薬がある既存モダリティと比較して、新規モダリティは開発実績や経験が少なく、使用可能な技術や情報も少ないのが現状です。製造施設や設備機器が不足しており、サプライチェーンの構築にコストがかかる課題が残されています。
今後注目の創薬モダリティ
近年、各国の製薬企業や公的な研究機関で、様々な創薬モダリティの研究が行われています。今後が期待される創薬モダリティ候補は次のとおりです※。
- マイクロバイオーム
- タンパク質分解誘導キメラ分子などのTargeted Protein Degradation技術
- mRNA医薬
- ナノ粒子
- マイクロニードル
- 再生医療・幹細胞
- Computational Drug Design
- 細胞外小胞・エクソソーム
- フォルダマー・ステープルペプチド
マイクロバイオームは、腸内や体表面に存在する微生物コミュニティを活用するモダリティで、病気の発症や予防、ヘルスケアへの貢献が期待されています。Computational Drug DesignはAI創薬などを活用するモダリティで、医薬品開発の期間短縮を図るとともに、イノベーティブな医薬品開発に役立つと考えられています。
新規モダリティの市場は今後拡大すると見込まれているため、各モダリティの動向を注視していくことが大切です。
なお、AI創薬についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
創薬モダリティの多様化に向け「インターフェックスWeek」で情報収集を
近年、ライフサイエンスや医療の研究が進歩し、様々なモダリティの医薬品が開発されています。最新のモダリティのトレンドを含め、医薬品の研究・製造の情報収集を検討している方はぜひ「インターフェックスWeek」をご活用ください。
インターフェックスWeekでは、医薬品の製造・検査から物流サービスまで、医薬品に関する製品・サービスが多数出展されます。創薬研究やバイオ医薬に特化した展示エリアもあり、モダリティ多様化のヒントを効率的に得ることが可能です。
インターフェックスWeekには、医薬品メーカーや関連企業の方が多数来場されます。最新の製品や技術、サービスをアピールしたい企業にもメリットの多い展示会です。関連する技術をお持ちであれば、出展の検討もおすすめです。
インターフェックスWeekの来場や出展には、事前登録が必要です。詳細は、以下のリンクをご確認ください。
創薬モダリティはさらなる多様化が見込まれる
モダリティは、創薬基盤技術の種類を示す用語です。従来の医薬品は低分子医薬品や中・高分子、抗体医薬品が中心でしたが、関連分野での技術革新を受け、近年では遺伝子治療薬、細胞医薬や新規モダリティに分類される医薬品の承認が増えています。創薬モダリティは、今後さらに多様化すると予想されます。
多様化するモダリティに対応するためには、最新の機器や技術に関する情報収集が大切です。インターフェックスWeekは、医薬品に関する様々な知見に触れる良い機会です。技術やサービスのプロモーションにも適しているため、ぜひインターフェックスWeekへの来場・出展をご検討ください。
▶監修:橋本 光紀
医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役。
九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研に海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。
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