ヘルスケアとは?意味や必要性、注目されている関連産業を紹介!
日本国内では急速な高齢化に伴う医療費や介護費の増大が深刻な問題となり、ヘルスケアの推進が必要といわれています。ヘルスケア関連産業は従来の医療・健康分野にとどまらず、幅広い分野で目覚ましい発展を見せています。
そこで本記事では、ヘルスケアの意味や必要性について解説します。また、近年注目されているヘルスケアに関連する産業についてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ヘルスケアの意味
日本ヘルスケア協会では、ヘルスケアを次のように定義しています。
「ヘルスケアとは、自らの『生きる力』を引き上げ、病気や心身の不調からの『自由』を実現するために、各産業が横断的にその実現に向け支援し、新しい価値を創造すること、またはそのための諸活動をいう」
ヘルスケアは従来、単に医療・健康という意味でしたが、時代とともにより広範な概念に変わりつつあります。現代のヘルスケアは、「身体的・精神的・社会的な総合的な健康を目指す幅広い分野の活動」をさします。
ウェルネス・ウェルビーイング・セルフメディケーションとの違い
ウェルネスとは「well(良い)」と「illness(病気)」が組み合わさった言葉であり、WHOが定義する「健康」※よりも広く捉えた概念です。具体的には、身体的・精神的・社会的に満たされることを目的に積極的な行動を取っている、心身ともに良好な状態をさします。
ウェルネスと似た言葉で「ウェルビーイング(Well-being)」があります。こちらは、「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と定義されており、ウェルネスに至った先の身体的・精神的・社会的に満たされた状態です。ウェルネスを実現するための基礎や手段にあたるのがヘルスケアといえるでしょう。
また、セルフメディケーションは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義され、個人の自己管理に焦点を当てているのに対し、ヘルスケアは社会全体の健康増進活動を含む点が両者の違いです。
※健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)
ヘルスケアの必要性
日本は現在、急速な高齢化と人口減少という大きな社会問題に直面しています。この状況下で、社会保障費(特に医療費や介護費)が年々増加し、財政を圧迫する要因となっています。これらの問題を解決するために、近年ヘルスケアの必要性が高まっています。
経済産業省のヘルスケア産業政策では、少子高齢化が進む日本社会において「国民の健康寿命の延伸」と「新産業の創出」を同時に達成することを目指しています。ヘルスケアの推進を通じて、人々が健康に長く活躍できる「生涯現役社会」の実現と、ヘルスケア産業の発展による経済活性化が期待されています。
ヘルスケアに関連する産業
以下では、ヘルスケアに関連する産業の代表例・具体的な検討項目について、「医療」「健康」「生活」の分野区分ごとに紹介します。
医療分野
OTC医薬品について詳しくは以下の記事で紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
健康分野
生活分野
注目されているヘルスケア産業
近年特に注目されているヘルスケア産業について、以下で紹介します。
医療DX
医療DX(DX:Digital Transformation)は、医療分野におけるデジタル技術の活用であり、医療の質や効率の向上をはじめ、患者の通院負担軽減や良質な医療の提供などを目的としています。医療DXが進むことで、人々はより質の高い医療・介護サービスを受けられるようになり、ヘルスケアの促進に繋がります。
医療DXの実現によって期待できることは以下のとおりです。
- 医療の質の向上と効率化
- 患者の利便性と健康維持の向上
- ビッグデータの活用による研究開発の加速
具体的事例を交えながら順番に解説します。
医療の質の向上と効率化
電子カルテの情報を標準化することで、病院間の情報共有がスムーズになるだけでなく、過去の診療情報に基づいた適切な治療を提供できます。また、診療報酬の計算を自動化すると、医療事務の負担軽減に繋がるでしょう。
患者の利便性と健康維持の向上
マイナポータルで健康診断の結果や処方された薬の情報を一元管理することで、患者自身が把握しやすくなります。また、オンライン診療が普及すれば、通院が難しい高齢者や遠方に住む人々も、医師の診察を受けやすくなります。
ビッグデータの活用による研究開発の加速
医療DXによって収集された膨大なデータを活用することで、創薬や新しい治療法の開発加速が期待できます。また、AIを利用したデータ解析によって、病気の予測モデルを構築することも可能です。
ヘルスケアIT
ヘルスケアITは、医療や健康管理における情報技術の活用を指します。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)などにより個人の健康状態を総合的に捉え、病気の予防や早期発見、治療後の生活支援を行うことを目的としています。
ヘルスケアITは医療の質を高め、患者の適応性を向上させ、社会全体の健康を支える重要な技術です。既存の治療法と日常生活データなどを組み合わせ、個人の健康状態に合わせた総合的なアプローチを提供する「パッケージ型ヘルスケアソリューション」をはじめ、「遠隔診療」などの普及が今後進むことで、医療の効率化や健康寿命の延長に繋がると期待されています。
PHRの利活用
PHR(Personal Health Record)とは、個人の健康情報をデジタルで管理・活用するシステムです。健康診断の結果、病院の診療情報、日々の生活データ(歩数、睡眠、食事など)を一元管理し、必要に応じて医療機関や関連サービスと共有できます。PHRの活用が進むことで、予防を重視したヘルスケア活動がさらに推進されると期待されています。
今後、医療機関だけでなく小売や飲食、フィットネスなど、生活関連産業との連携による日常生活での活用が進むと予想されています。また、実現に向けては適切な情報の取り扱いに係るルール整備や、プライバシー保護のためのガイドライン策定などが必要です。
医療DXやヘルスケアITの情報収集なら「インターフェックスWeek」へ
「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の研究・製造技術からDX関連など最新テクノロジーまで出展される、RX Japanが主催の展示会です。2025年からは、医薬・ヘルスケア関連のDXソリューションが集まる「ファーマDX EXPO」も同時開催されます。また、展示だけでなく医薬品に関する多数のセミナーも併催されるため、ヘルスケアや医薬品業界の知見を深めたい方におすすめです。
業界の専門家や企業が集まり、商談が活発に行われる場でもあります。製品・サービスの比較検討で来場される専門家も多いため、関連製品・サービスを提供している企業様は、ぜひ出展もご検討してみてはいかがでしょうか。
インターフェックス Weekは東京と大阪で開催予定です。それぞれの詳細は以下のリンクよりご確認ください。
健康寿命の延伸・医療費の削減にはヘルスケアの推進が必須
日本の人口構造は急速に高齢化率が高まっており、労働力減少に伴う経済活動の停滞が懸念されています。社会保障給付費の増加による財政圧迫が問題となっており、医療費の削減や健康寿命の延伸が急がれるなか、これらの課題を解決するために、ヘルスケアの推進が必須です。
ヘルスケア分野でのイノベーションが進むと、より効率的かつ質の高い医療が提供され、国民の健康を支えるだけでなく、持続可能な社会全体の発展にも貢献できます。今後もヘルスケア産業は進化を続け、私たちの生活に深く関わっていくことでしょう。
RX Japan主催の「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される日本最大級の展示会であり、様々な分野の専門家や企業担当者と情報共有や技術相談、商談を行うこともできます。
医薬品業界に関する知見を深めたい方や、関連製品・サービスを提供している企業様は、ぜひインターフェックスWeekへの来場・出展をご検討ください。
▶監修:山本 佳奈
内科医、医学博士
1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県), ナビタスクリニック(立川)での勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
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