製薬会社の工場の特徴とは?求められる要件や製造工程、業務効率化のポイントを解説

製薬会社の工場では、人々が日常で服用するかぜ薬や解熱鎮痛剤から、抗体医薬品やバイオ医薬品まで、多種多様な医薬品が製造されます。人の身体に直接作用する医薬品を製造するため、「薬機法)や「GMP省令)など遵守すべき法律があり、近年では開発・製造工程の外部委託も進んでいます。

本記事では、製薬会社の工場の特徴や求められる要件、医薬品の製造工程を解説します。CMOやCDMOへ外部委託するメリットも紹介しているので、ぜひご一読ください。



製薬会社とは?

製薬会社とは、医薬品の研究開発や新薬の創出、製品の生産や販売に携わる会社です。

医薬品は、疾病の治療や健康の維持などに用いられ、人の体に直接影響をおよぼします。安全性や有効性の確保がとても重要であるため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)や「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(GMP省令)などの法的規制が厳しい点が特徴です。

近年では、情報分野の技術発達を背景に、AIを活用した有効物質の調査やオンライン臨床試験、ビッグデータの活用など、デジタル技術を活用した創薬イノベーションが進められています。



製薬会社の工場の特徴

製薬会社の工場の主な特徴は次の3つです。

  • GMPに適合している
  • 生産設備の汎用性が高い

各特徴の詳しい内容を紹介します。


GMPに適合している

GMPは「Good Manufacturing Practice」の略称です。日本語では「医薬品の製造管理および品質管理の基準」と表現されます。

日本では、「厚生労働省令で定める基準(=GMP省令)に適合していると認められない」(薬機法第14条第2項)時には、医薬品の製造・販売で必要な承認を取得できません。そのため、製薬会社の工場はGMPの三原則に則り、GMP省令を遵守した上での医薬品製造が求められます。

なお、GMPをより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:GMPとは?目的・種類や運用方法までわかりやすく解説


生産設備の汎用性が高い

医薬品の製造は、多品種・少量生産が特徴です。製造工場の生産設備は複数の医薬品を生産できる兼用ラインとするなど、汎用性をもたせて製品の多様化や需要変動に対応できる設計がなされます。

生産設備が多品種・少量生産に対応している背景には、医薬品業界特有のビジネスモデルが関係しています。多品種・少量生産のビジネスモデルは、医薬品の安定供給を阻む構造的課題として認知されており、今後改善が図られる分野でもありますが、多くの工場がこのビジネスモデルに応じた生産設備を有しているのが現状です。



製薬工場に求められる要件

製薬工場は、多くの法規制を満たした上で建設されなければなりません。以下では、製薬工場に求められる要件を3つの視点から解説します。

  • 施設に関する要件
  • 製造に関する要件
  • 環境に関する要件

施設に関する要件

製薬工場は、工場立地法、建築基準法、消防法などの関連法規制の要件を満たした上で建設されます。例えば、一定規模以上の工場を新設する際には届出義務が課されます(工場立地法)。また消防法では、火災の予防や災害時の傷病者搬送が適切に行われるために、防火・消防管理者の配置や消防計画の届出を規定しています。

さらに、GMP省令の遵守も重要です。外部からの虫の侵入や製品への異物混入を防ぐために、工場の窓やドアには防虫フィルムを貼り、気密性を高めるなどの対策が必要です。


製造に関する要件

医薬品の製造の関連法令は多数あります。例えば薬機法では、医薬品製造業の許可などを定めており、原薬の製造には該当する区分の許可が必要です。薬機法以外でも原薬の製造に係る法令および規則などの事項が複数を定められています。

また、GMP省令の規定を守るためには、製造過程での温度や湿度、換気や照明が適切な状態に保たれる必要があります。そのため、温度や湿度、換気回数をモニタリングできる仕組みづくりやバリデーションの実施も重要です。


環境に関する要件

製薬工場は、環境への配慮も求められます。環境分野の関連法令には、廃棄物処理法や容器包装リサイクル法などがあります。製造過程で生じた廃棄物は、廃棄物処理法で規定された処理方法を遵守して、適正に廃棄しなければいけません。容器包装リサイクル法では、容器の製造業者にリサイクル化を課しています。



医薬品の製造工程

医薬品の製造は大きく3つの工程に分けられます。

  1. 原薬製造工程
  2. 製剤工程
  3. 包装工程

原薬製造工程は、医薬品の原薬や原末を製造する工程です。厳しい基準を満たした原料を反応窯で混ぜ合わせる、化合物を冷却して結晶化させる「晶析(しょうせき)」を行うなどの作業が実施されます。

製剤工程は、製造された原薬や原末を錠剤やカプセル、軟膏や注射剤など使用用途に合わせた様々なかたちへ製剤する工程です。原薬を粉末から下流へ加工する、原料が1錠・1カプセルに均等に配分されるよう、均一に混ぜるなどの工程が行われます。

包装工程は、各特性に適した方法で包装する工程です。例えば、プラスチックのPTPシートを成型して錠剤やカプセルを入れ、アルミ箔で封をする包装はその一例です。その他、ブリスター包装やユニットパック包装など、内包される医薬品の特性に合わせた包装がなされます。

なお、医薬品の製造工程における品質保持のためには、GDPガイドラインに則った厳格な品質管理が不可欠です。包装工程後の医薬品が患者に安全に届けられるよう、仕入れから保管、供給に至るまでの全工程で品質管理の徹底が求められます。

これにより、医薬品の安全性と有効性が保持され、患者の健康と安全が守られます。



製薬会社がCMOやCDMOを活用するメリット

2005年の薬事法改正により、医薬品製造の全面的な外注化が可能となりました。近年では、製薬会社がCMO(Contract Manufacturing Organization)やCDMO(Contract Development Manufacturing Organization)に製造や開発を委託するケースが増えています。

以下では、製薬会社がCMOやCDMOを活用するメリットを解説します。

なお、CMOやCDMOは次の機関を意味します。

  • CMO:企業の受託を受けて、医薬品を製造する医薬品受託製造機関
  • CDMO:企業の受託をうけて、医薬品の製造と開発を行う医薬品受託製造開発機関

CMOやCDMOを詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:CDMOとは?CMOとの違いや事業内容、活用するメリット、課題をわかりやすく解


研究開発やマーケティングに集中できる

CMOやCDMOへ委託する大きなメリットは、自社の経営資源を研究開発やマーケティングなど、より根幹に関わる業務へ割り当てられる点です。例えばCMOに製造業務を委託すると、製薬会社は医薬品の研究開発に集中できます。CDMOの場合は医薬品開発も委託できるので、マーケティングに注力できる点は魅力です。


開発・製造に伴うコストを低減できる

医薬品開発・製造には、臨床試験段階からの長期間に渡る先行投資、工場や生産設備の構築にかかる費用、それに関わる人的コストなど大きなコストが必要です。

CMOやCDMOを活用し、水平分業に基づく生産体系を構築することで、開発・製造にかかるコストを削減できます。特に、資金力のないベンチャー企業が自社で製薬工場を保有するのは難しいことです。CMOやCDMOに開発・製造工程を委託すると、新薬シーズへの投資や自社ブランドの育成に集中できます。


グローバルに供給できる

海外には、スイスのロンザや韓国のサムスンバイオロジクスなど、大規模な設備投資をすでに行っているCMOやCDMOが存在します。各国で拠点をもつCMOやCDMOを活用すれば、その国の拠点で医薬品の開発・製造を行う戦略も可能で、グローバルな視点での製品供給に役立ちます。


非常時の輸入途絶リスクを低減できる

近年、医薬品の供給は国内生産だけでなく、海外からの輸入も一般的です。海外からの輸入に依存している場合、非常時に輸入が途絶した際に国内の供給が止まるリスクが想定されます。輸入と並行して国内のCMOやCDMOを活用すれば、輸入途絶リスクを低減でき医薬品を安定的に供給できる場合があります。



CMOやCDMOを検討するならインターフェックスWeekの活用を!

従来、製薬会社は自社の工場を持ち、研究開発も自社で行う「垂直一貫型」の経営戦略が一般的でした。近年では法改正が行われたこともあり、製造や研究開発の外部委託が可能です。

今後、CMOやCDMOを活用した「水平分業型」を行うなら、「インターフェックスWeek」での情報収集をご検討ください。

インターフェックスWeekは医薬品や化粧品向けの展示会で、原薬や分析機器、製造設備など多種多様な製品・サービスが展示されます。CMO・CDMOの専門展示エリアがあるため、医薬品の製造や研究開発から委託したい方に最適です。

その他、バイオ医薬品の研究機器や受託サービスが展示される「バイオ医薬 EXPO」、医薬品の研究・開発が展示される「ファーマラボ EXPO」も開催されます。バイオ医薬を得意とするCDMOや、研究業務の支援サービス企業なども出展します。

なお、インターフェックスWeek ではCMOやCDMOの方の出展も募集中です。CMOやCDMOに興味のある方や技術者と商談でき、リードを獲得しやすいメリットがあります。

2024年度のインターフェックスWeekは、以下のスケジュールで開催されます。

インターフェックスWeekの詳細は、以下のリンクよりご確認ください。

■インターフェックスWeek東京
2024年6月26日(水)~28日(金)開催

■インターフェックスWeek大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)開催



製薬会社の工場は関連法制の要件への配慮が必要

製薬会社の工場は比較的小規模で建設できる反面、関連法制の要件が厳しい設備です。自社で製薬工場を保有する場合には、相応の資金と時間的コストがかかります。また、施設や工程、環境などの法的要請を全て満たす設計が必要です。

近年では、製薬業界でもCMOやCDMOを活用した外部委託が進んでいます。インターフェックスWeekはCDMOの専門展示エリアがあり、医薬品の製造・開発を委託したい方や受託したい方の商談や情報収集に適した場です。2024年6月には東京で、2025年は2月には大阪で開催されるので、ぜひご来場・ご出展ください。

■インターフェックスWeek東京
 2024年6月26日(水)~28日(金)開催
 詳細はこちら 

■インターフェックスWeek大阪
 2025年2月25日(火)~27日(木)開催

 詳細はこちら


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▶監修:前田修

薬剤師。
大学院修士課程を分子薬理学専攻で修了後、製薬会社の研究所でドラッグデザインを含む新薬探索研究に従事。その後、国立国際医療センター研究所(当時の名称)で外部研究員として、さらに臨床開発業務を経て新規薬剤の創薬に携わる。開発業務受託機関で、他科診療領域の新薬製造販売承認取得を支援。その後、調剤薬局株式会社で代表取締役に就任。現在は、複数の医療関係記事を執筆中。


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