医薬品のAPIとは?製造プロセスや原薬GMP、評価・選定方法を詳しく解説!
医薬品を取り扱う企業に所属する方のなかには、「API」という単語を見聞きした経験があるものの単語の正確な意味に関しては把握していない方がいるかもしれません。
そこで、本記事では、医薬品関連企業の経営者や従業員に向けてAPIがどのようなものなのかを詳しく解説します。APIの製造プロセスや、製造管理・品質管理の基準である原薬GMP、APIの評価・選定方法もあわせてご紹介します。
医薬品の「API」とは?
API(Active Pharmaceutical Ingredient)とは、医薬品の「有効成分(活性成分)」を意味する用語で、日本語では「原薬」や「原体」とも呼ばれます。
「APIの定義」および「中間体との違い」を順番に説明するので、しっかりと理解しておきましょう。
APIの定義
APIは、疾患の診断・治療・緩和・手当・予防に関して直接の効果・薬理活性を示したり、身体の構造・機能に影響を与えたりする化学成分であり、英語で「Drug Substance」と表記される場合もあります。
医薬品のパッケージには、API(原薬)の名称や含有量の記載が必要です。
API(原薬)と中間体の違い
API(原薬)と混同しやすい用語として、「中間体」があります。中間体(intermediate)とは、原料(raw material)からAPI(原薬)を製造する過程で生成される物質です。「原料」と「原薬」も混同しやすい用語なのでご注意ください。
医薬品の製造などに携わる方は、「原料(raw material)から出発し、中間体(intermediate)を経て、API(原薬)が製造される」という流れを把握しておきましょう。
API(原薬)の製造過程
APIを製造する医薬品メーカーには、「APIの製造のみを担当する業者」の他に、「APIを製造した上で医薬品添加剤と混ぜ合わせ、顆粒剤・錠剤・カプセル・シロップ剤・軟膏・クリーム・湿布・テープ・目薬などの最終形態(製剤)にまで加工する業者」も存在します。
以下は、低分子医薬品のAPI(原薬)を製造する際の流れの例です。
- 仕込み:基準をクリアした原料を、パイプラインを通して反応釜に投入する
- 反応:原料を混ぜ合わせ、熱を加えたり冷やしたりしながら化学反応を進行させる
- 晶析:反応液を濃縮し、結晶化させる(常に結晶の形状・大きさが同じになるように、温度や時間、かき混ぜる速さなどを管理)
- 分離:結晶が含まれた晶析液を遠心分離機に入れ、高速で回転させて余分な液体を分離し、結晶だけを取り出す
- 篩分:交差汚染に配慮しながら、無菌処理された容器に充填する(高い清浄度が求められる工程)
- 乾燥:スプレードライで乾燥させる
- 充填:原薬が乾燥したら、粒の大きさを整えた上で容器に詰めて密閉する
- 製品試験:分析試験を実施し、品質や安全性を厳しくチェックする
- 保管:温度管理された倉庫で保管する
バイオ医薬品のAPI(原薬)に関しては、以下に示す流れで生産されます。
- 原料(セルバンク等から取り寄せた細胞)を解凍し、培養を開始する
- 大量生産するために、培養スケールを順次拡大する
- 目的とするタンパク分子を抽出・精製する
- 容器充填後、凍結乾燥して保管する
上記は、あくまでも「大まかな手順」です。製造プロセスの詳細に関しては、各業者にお問合せください。
API(原薬)のGMP
API(原薬)の品質は、製剤の品質に直接影響します。製剤の品質を保証するためには、「原薬GMP」に基づいて、API(原薬)の品質を確保しなければなりません。原薬GMP(Good Manufacturing Practice)とは、「API(原薬)を製造する上で守るべきルール(製造管理・品質管理の基準)」です。
医薬品規制調和国際会議(ICH)で合意されたガイドライン(ICHQ7)が2001年に通知され、現在の日本では「GMP規則」や「原薬GMPのガイドライン」などで、「原料の受入」「製造」「包装」「表示」「品質管理」「出荷」「保管」「流通」などの業務に関する具体的な基準が定められています。
API(原薬)を製造し、他社に販売するのであれば、上記規則・ガイドラインなどに従わなければなりません。原文に目を通し、内容を正確に理解しておきましょう。社内で対応できない場合は、支援サービスの活用も選択肢のひとつです。
GMPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶関連記事:GMPとは?目的・種類や運用方法までわかりやすく解説
ICHで作成されるガイドラインについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
API(原薬)の評価・選定方法
API(原薬)を他企業から調達し、最終的な製品(製剤)に加工するメーカーは、「API(原薬)の評価・選定作業」を実施する必要があります。以下は、評価・選定プロセスの大まかな流れです。
- 文献調査を実施する(特許や日本薬局方・米国薬局方・ヨーロッパ薬局方などの文献をチェックし、原薬の物理化学的性質や試験法などに関する情報を収集)
- 分析機器を使用して、API(原薬)の品質評価を実施する
製剤の製造事業を営むのであれば、「API(原薬)製造業者が、どこから原料(raw material)を入手しているのか(安定的に入手可能か)」や「API(原薬)製造業者の製造能力・経営状態」といった要素も吟味した上で、どの業者からAPI(原薬)を調達するのかを慎重に検討しましょう。
納入された原薬は、品質を評価し、規格の判定基準への適合を確認する必要があります。品質を評価する際には、高速液体クロマトグラフ装置・質量分析計・X線回折装置・走査型電子顕微鏡・NMR(核磁気共鳴)装置・示差走査熱量計(DSC)などの分析機器を用いて、不純物の割合に関する定量分析(純度試験)や、原薬の結晶構造に関する分析(熱分析による結晶多形の判別等)などを実施してください。
展示会でAPI(原薬)や合成サービス、関連技術を探しましょう
「インターフェックスWeek」とは、RX Japanが主催する展示会です。医薬品・化粧品の研究から製造に至るまで、様々な段階に対応した製品や支援サービスが出展されます。
API(原薬)や合成サービス、APIの製造・評価などに役立つソリューションなども出展されるので、ご来場の上情報収集をしてはいかがでしょうか。
なお、「インターフェックスWeek」は、「製薬会社に向けて、API(原薬)や、関連する支援サービスを提供する企業」にとっても有益な展示会です。販売先の開拓につながるので、ぜひ出展をご検討ください。
■インターフェックスWeek東京
2025年7月9日(水)~11日(金)開催
■インターフェックスWeek大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)開催
GMPを遵守してAPIを製造するために、支援サービスの活用を
APIとは、医薬品の「有効成分」を意味する用語です。目的とする効果を示す化学成分で、「原薬」や「原体」と呼ばれる場合もあります。
化学製品を原料としたAPI(原薬)は、「仕込み」「反応」「晶析」「分離」「乾燥」「充填」「製品試験」「保管」という一連のプロセスを経て製造・出荷されます。製造する際には、「原薬GMP」を遵守しなければなりません。
なお、API(原薬)を調達した上で製剤を製造する企業の場合、評価・選定作業を実施する必要があります。社内のスタッフで対応できない場合は、外部の支援サービスの活用も選択肢のひとつです。
RX Japanが主催する展示会「インターフェックスWeek」でも、API(原薬)や様々なソリューションが展示されるため、ご活用をおすすめします。
▶監修:牧崎茂
株式会社プロアクティブコンサルティング 代表
2009年4月に中小企業診断士としてまた、久光製薬㈱での薬事監査業務の経験を活かし、GXP QAコンサルタントとして独立。GMP工場のコンサルティング、監査業務を含む、GXP(GLP, GCP, GVP等)に関連した幅広いエリアでのGXP及びQMSの構築に関する専門家として活動を行っている。
▼この記事をSNSでシェアする